広島中崎翔太投手(26)が緒方孝市監督(49)から胴上げ投手に指名された。休日返上でマツダスタジアムを訪れた守護神は、チームの勝利に貢献することだけを考え、3年連続胴上げ投手には興味を示さないが、快挙達成の可能性は十分。優勝マジックは4。広島は現時点で最短V日の21日から8試合続けて本拠地マツダスタジアムでの試合が予定されている。地元Vのエンディングには、この男がふさわしい。

神宮でのヤクルト戦でマジックを4とし、広島に帰ってきた。3日間の練習日が続き、先発投手のみとなった初日、中崎はマツダスタジアムに姿を見せた。多くの選手が休養日に充てる中、開幕から続ける無休トレを継続。本拠地胴上げへ向けて調整に余念がない。

「ホームで決めることが大事になる。負けて(マジック対象)相手の結果待ちというのは。勝って決まる方がいい」

20日からマツダスタジアムで9連戦。91年以来の本拠地優勝の可能性は高い。あとは勝って、そのときを迎えられるか。緒方監督も抑えと同じ気持ちだ。「まずは勝って終わりたい」とキッパリ。その上で胴上げ投手には守護神を指名した。「そうなる(勝ち試合)と流れ的には中崎になる」。ここまでチームトップの60試合に登板し、リーグ2位の30セーブをマーク。開幕から不安定だった中継ぎ陣を支えてきた守護神に、3連覇のゴールテープを切ってもらうつもりだ。

指名を受けた中崎は、「胴上げ投手」に過剰な意識はない。「僕じゃなくても、試合に勝てればいい。打線がすごいので、10点、20点取ってくれるかもしれない」。歓喜の瞬間に誰がマウンドにいるか、周囲の注目度が高まる中、守護神は笑い飛ばす。あくまでもチームの勝利に貢献することだけを考える。3年連続胴上げ投手となれば、71年から73年までの巨人高橋一三以来の快挙だが、栄誉に興味はない。

カウントダウンが始まった本拠地優勝しか見ていない。「ビジターでもたくさんの声援をもらっているけど、ホームではもっと多くのファンがいるので決めたい」。16年は東京ドーム、昨年は甲子園…。本人は興味を示さなくとも、地元ファンと一緒に味わう歓喜の瞬間に、ふさわしい存在であるのは間違いない。【前原淳】

◆16年9月10日巨人戦(東京ドーム) 先発黒田から今村、ジャクソンとつなぎ、2点リードの9回に中崎が登板した。2者連続三振の後、長野に安打を許すも、最後は亀井を遊ゴロに打ち取った。初めての胴上げ投手の栄光を手にして「何とも言いようがないです。黒田さんと新井さんが抱き合っているのを見て、もらい泣きしました」と喜んだ。

◆17年9月18日阪神戦(甲子園) 6回1失点の先発野村から一岡、ジャクソンとつないだ。最少得点差の9回は中崎が3者凡退に。最後は代打伊藤隼の遊飛でゲームセット。「こんなこと経験できないし、ありがたいです。イチ(一岡)さん、今村さんがいる中で任されて、うれしい」。一時は戦列を離れ、抑えからも外れた時期もあったが、2年連続で歓喜の中心にいた。