最高の花道だ。ソフトバンク戦に1番中堅で出場したロッテ岡田幸文外野手(34)は5回、東浜の外角直球を三塁線へ転がした。7回は中前へ、9回は右前へと全方向への3打席連続安打。「やっぱりうれしい。『H』が付くと。気持ちなんでしょうね。1本打つとプロ野球選手は、次の打席も球が見えたりする。余裕が生まれる。あらためて感じました」。9回は俊足で二盗も決めた。プロ野球選手としての喜びを、かみしめた3時間6分だった。

16年10月5日からこの日の第2打席まで、59打席連続無安打だった。安打も猛打賞も2年ぶり。プロ入りから2501打席本塁打なしはプロ野球記録になった。「ただがむしゃらにボールを追いかけ、グラウンドを駆け回るプレーでした。ホームランを打ったこともありません。なのに10年間プレーできました」。たとえ打てずとも、華麗な守備でチームを救うスペシャリスト。それが岡田だった。

11年にはシーズン359守備機会連続無失策のパ・リーグ新記録を樹立した。この日、守備機会は1度もなかったが“定位置”は「最高の景色だったなあ」。9回、井口監督らの計らいでファンが集う右翼に就いた。目は涙でいっぱい。胴上げで6度宙を舞い、娘3人と場内を1周した。昨年「初本塁打を打って披露したい」と掲げた特技のバック宙。夢はかなわなかったが、大歓声と応援歌に、クルッと1回転して応えた。

悔いはない。「最高な野球人生でした。守備範囲の広い外野手を育ててみたい。それが次の夢ですね」。育成から日本一まで経験した名手は笑顔でユニホームを脱いだ。【鎌田良美】

▼連続打席無安打 シーズン記録は投手の嵯峨(東映)が64年につくった77打席で、嵯峨はシーズンをまたぎ64~65年に90打席連続無安打。野手のシーズン記録は93年トーベ(オリックス)の53打席。野手のシーズンをまたいだ記録は不明だが、76~77年桜井(南海)が58打席続けたケースがある。