東京オリンピックに向けたサウスポー強化へ、変則左腕の高梨雄平投手(26)がキラリと存在感を見せた。「2018 日米野球」第3戦は3-7で初黒星を喫した。左腕3投手が救援登板する中で、4番手の高梨は1回無失点と好投。打撃陣は不振で先発を外れた山川穂高内野手(26)が、9回に代打で適時二塁打を放ち、最終回に2点を奪う粘りを見せた。第4戦は13日にマツダスタジアムで行われる。

フル代表2度目の選出となった変則左腕が、名捕手モリーナを追い込んだ。8回2死、フルカウントからの7球目。高梨が外角ボールゾーンから124キロのスライダーをストライクゾーンへ曲げる。5回に3ランを放った強打者のバットはピクリとも動かない。見逃し三振に切り、小走りで一塁側ベンチに向かった。

「まさか三振を取れるとは思っていなかった。フォアボールはもったいないし、ちゃんと勝負したいと思った結果。米国は右バッターが多いので、求められたところで抑えたいです」

敗戦の中で、13球で3アウトを奪った高梨の好投は好材料だった。稲葉監督は国際大会における左腕を重視し、新戦力の発掘を日米野球のテーマに掲げている。16年ドラフト9位の高梨は、今季70試合に登板してチャンスをつかんだ。クローザー候補の松井に加え、笠原、浜口、岩貞、成田と今大会は6人の左腕を招集。この日は岩貞、成田が登板する中で、高梨がキラリと光る存在感を見せた。

2勝1敗で前半戦を終えた稲葉監督は「この3連戦はまずは経験してもらうために、投げる選手を決めて継投していく形だった。広島からは誰がどこでいくかは決めずに、やっていこうと思います」と本番モードに突入する。各投手の調子や適性を見極め、勝利のための継投に入る。

MLB選抜は、左打者のソトが東京ドームの天井にぶち当てる規格外のパワーを見せている。建山投手コーチは「(高梨は)本当はソトのところで投げさせたかった。(ボールの)出どころの見づらい投手は重宝される」と“ソトキラー”に指名。高梨は「自分ができることは目の前の1球に集中することだけ」と引き締める。国際大会には欠かせない左腕のスペシャリスト発掘へ、残り3試合は貴重な実戦の機会になる。【前田祐輔】