米アリゾナで沢村賞右腕同士による至極の雑談が繰り広げられた。

カブスのダルビッシュ有投手(32)が日本ハムのキャンプ地を訪問。新加入の金子弌大投手(35)の投球練習を視察後、変化球談議を行った。2人合わせて日米通算270勝。現役最高峰に位置する日本人投手2人が異国の地で異次元のコミュニケーションを図った。

ダルビッシュが、古巣のキャンプ地にやってきた。球団スタッフも着用する青いジャージーを上半身に身にまとい、カートに乗ってさっそうと登場。ブルペンを横切ると、カートから降りて1人の投手の投球を凝視した。金子だ。ブルペン入りした金子の球筋を、投手側から“のぞき見”。しばらく見守った後に栗山監督へあいさつ。指揮官に「チヒロさんみたいに投げたいですよね」とつぶやいた。

ダルビッシュがブルペンから、投手陣がコンディショニングを行っているグラウンドへ移動すると、金子と変化球談議が始まった。「先日、家に着ていただいた時に野球の話にならなかった。聞けなかったこともあったので、いろいろ金子さんの『変化球バイブル』の疑問とかを聞いていました」。探求心旺盛で金子の著書もチェック済みで、かねて抱いていた質問事項をぶつけていたという。

金子によると、チェンジアップについて意見を交わしたという。「投げる時に、どうしたら、そういう風になるんですかと聞かれました。そんな質問をされるとは思ってもいなかった」と驚きながら明かした。惜しみなく、自分の感覚をメジャーでエース格として活躍する後輩右腕に身ぶり手ぶりを交えて伝授した。

お互いに、一流の存在であることを認める。ダルビッシュは「本当に唯一無二で何でもできるピッチャーだし、いろいろこだわりも持っているので非常に価値のある投手だなと思っています」と話せば、金子は「年下ですけど実力も成績も上なので、本当にすごい。見習わなければいけないことが多い。ダルビッシュから、そう言われるのはうれしい。僕もそう言われたからには、そういう存在になり続けなきゃと思う」。

金子の日本ハム移籍で実現した現役日本人右腕2人による至極のマッチアップは、お互いを刺激しあう有意義な時間になったようだ。【スコッツデール(米アリゾナ州)7日(日本時間8日)=木下大輔、田中彩友美】

◆金子とダルビッシュ 04年ドラフトの同期だが、公式戦の先発対決はなし。同一試合登板は、レギュラーシーズンでは09年9月20日(ダルビッシュ先発、金子5番手)のみ。プレーオフでは08年10月11日のクライマックス・シリーズ第1ステージで、ダルビッシュが完投勝利に対し、金子が6番手で登板した。2人とも変化球が多彩で、それぞれの専門書「変化球バイブル」を監修していることも共通点。専門書で、金子は10種類の球種を操るとし、ダルビッシュは10球種(全12種類)の全貌を明かしている。