車体同様の重厚感は、ミット音に表れた。

DeNAのドラフト3位右腕、大貫晋一投手(25=新日鉄住金鹿島)が9日、ブルペンで新球「メルセデス・ツーシーム」を披露した。

ドイツ製の高級車をほうふつとするスピードある直球は、プレート付近で急激にシュートした。今までのツーシームは、シンカーのような球筋の1種類のみ。「右打者だけではなく、左のインコースにもフロントドアが使える」と新たな武器の“乗り心地”を口にした。

投球の幅を広げるべく、キャンプから2種類目のツーシームの試作を繰り返した。キャッチボール中に握りを模索し、これまでよりも握り幅を狭めた形で落ち着いた。そこに三浦投手コーチからの「縫い目を意識しろ」というアドバイスが生きた。「ハッとしました。意識するだけで曲がりが全然違う」と完成形へと近づけている。

持ち球は直球、カーブ、スライダー、フォーク。そしてツーシームの対となるカットボールも生きると考える。「攻め方が変わる。だから今すごくカットボールの練習もしているんです」とうなずく。番長も然りだ。三浦コーチは現役の05年、カットボールを習得。対のシュートとの幅のある投球で、キャリア初のタイトル(最優秀防御率、最多奪三振)を獲得した。大貫も「そうなれたらいいですけど」と背中を追う。

誕生日だった3日、全体集合の際にベンツのマークを体全体で表現した一発ギャグ「メルセデス」を披露し、注目を集めたルーキー。社会人時代、チェンジアップも挑戦したが、モノにはできなかった。やっぱり大貫には“メルセデス”が似合う。【栗田尚樹】

◆大貫晋一(おおぬき・しんいち)1994年(平6)2月3日、神奈川県生まれ。桐陽3年夏に県大会8強。日体大では2年春にベストナイン獲得。新日鉄住金鹿島を経て、18年ドラフト3位でDeNA入団。181センチ、73キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸1200万円。