ヤクルト石川雅規投手(39)が、まさに“ピンポイント”の投球を披露した。シーズン前最後の登板となった日本ハム戦(札幌ドーム)に先発し、4回を被安打1、無失点に抑えた。

3回1死で迎えた「ファウルの達人」中島卓也との攻防が真骨頂。12球の根比べを制し併殺に封じた。安定感抜群プロ18年目、通算163勝の左腕は、30日阪神戦(京セラドーム大阪)での先発が予定されている。

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技術と技術のぶつかり合いに、石川は粘り勝ちした。3回に初めて安打を許し、1死一塁で迎えたのは中島卓。ボールとストライクを反復し、平行カウントとなってからファウルが6球、続いた。

高低、内外を繰り返しバットの芯を外そうとする石川に、食らいつく中島卓。オープン戦らしからぬ空気が充満した。12球目。「根気で負けないように。なんとか前に飛ばしてもらおうと思っていた」。外角の遠い場所から、真ん中低めへ鋭くシュートを沈めた。直前の11球目に、外角低めへ逃げるボール球のスライダーをまいておいた。同じ場所から逆方向に曲げ、誘いをかけた。

厄介者のタイミングを外す併殺に、4回の3者三振。勝負への準備は終わった。「いろんな球種でストライクがとれたし、思った所に投げられた。オープン戦でも、シーズン同様の気持ちで1人1人抑える投球を意識している」と手応えを口にした。

下支えしているのは、18年間コツコツと続けてきた投げ込みだ。2月の浦添キャンプでは午前と午後の両方でブルペンに入る日を作るなど、合計1000球以上を投げ、みっちり肩を仕上げてきた。以前は2000球以上を投げ込んだシーズンもあったという。年齢を重ね徐々に球数は減っているが「投げ込み」という原点的な調整法が体に染みついている。

「投げ込みは、勉強と同じなんですよ。1回で覚える人がいれば、何回も復習する人もいる。毎年、少しずつでもフォームは違うから、再現性を高めるために投げ込んでいるんです」

山本昌、工藤公康、三浦大輔。制球力で日本球界に名前を刻んできた投手は、キャンプでの投げ込みを何より大切にしていた。「同じように活躍したいと思って見ていた。お話を聞いたりして、そこから続けてきた。年齢がいって、体も変わった部分があって僕も投げられなくなってきている。でも、これからも“意味のあるボール”を投げたいと思っている」。現役最多の163勝投手。黙々と培った技術で勝利を引き寄せる。【保坂恭子】