クールな楽天浅村栄斗内野手(28)が右腕を突き上げていた。わずか1点リードの8回1死三塁から試合を決定づける移籍後初アーチを左中間スタンドに突き刺した。

「犠牲フライでもいい場面。冷静に、軽くいきました」とあっさり振り返った一方で「楽天のために、勝てる1打を意識してきた。ホーム開幕戦で、試合を決める1打が打てたので(ガッツポーズが出た)」と感情があふれた。

すごみは、4回無死二塁からの二ゴロに凝縮される。「最悪でも右打ちをして、島内さんが楽に打てるように」。走者を三塁に進ませ、前進守備の遊撃後方に落とす4番島内の先制打を呼び込んだ。主軸、ポイントゲッターでありながら、当たり前のように自己犠牲に徹する姿勢は、西武時代に栗山らの背中を見て学んだ。「そういう先輩たちとやれたことで、本当に勉強させてもらった。僕はもう若手じゃない。チームが勝つために、ということを考えてやらなきゃいけない立場」と偉ぶらずに言った。

平石監督が「オレも興奮したよ」と満面の笑みを浮かべたように、最高の本拠地デビュー。お立ち台では「慣れてないし、キャラじゃない」と苦笑しつつ、楽天おなじみの「バーン」も初体験した。10年8月10日、19歳の時に楽天山村からプロ初本塁打を放ったのもKスタ宮城だった。「そりゃあ、覚えてますよ」。この日は気温2度、雪も舞う中での一戦。「野球人生で一番寒かった。ホーム開幕戦で移籍1発目が打てたし、忘れられない試合になりました」と新たな思い出を刻んだ。【亀山泰宏】