完璧すぎる虎1勝だ! オリックスからFA移籍した阪神西勇輝投手(28)が、自身2年ぶりの完封で移籍後初勝利を挙げた。志願の9イニングで140球を投げ込み、広島打線を散発6安打に封じた。完封勝利は12球団一番乗り。頼もしすぎる右腕が躍動し、チームはセ界王者に気分爽快のカード勝ち越しだ。

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最後の最後まで笑顔だった。9回2死二塁。マウンドの西は、気持ちのこもった直球で広島西川を三邪飛に仕留めた。マウンドまで駆け寄った女房役の梅野と笑顔で熱く抱擁。移籍後初勝利を17年4月9日日本ハム戦以来となる完封勝利で飾った。ベンチで出迎えたナイン1人1人とハイタッチ。「完封、完投は関係ない。何よりもチームが勝てたことが良かった」と、また笑った。

真骨頂のピッチングだった。初回に先頭田中広への死球から1死満塁の場面を招くも、松山を外角チェンジアップで一塁併殺。2回以降はギアを上げて精密機械のようにアウトを重ねた。9個の三振を奪取し、球数もかさんだが、「ここ最近、中継ぎも使っていた。何とか自分が最後までという気持ちだった」。9回には5度目の打席に立ち、その裏のマウンドへ。おとこ気満点の救い投げに矢野監督は「文句なし。いい意味でやっぱり投球を楽しめている」と褒めちぎった。

08年ドラフト3位でオリックスに入団。当時から西を知る阪神本屋敷俊介トレーナー(43)は「特別すごいというところはなかった」と振り返る。同じ高卒選手と比べても筋肉量は劣り、ダッシュメニューでもすぐにバテた。設定タイムを切れずに何度もやり直しをさせられた。

ただ、西には客観的に自分を分析できる能力があった。同トレーナーは「努力で劣っているところを底上げした。阪神に来てからも自分が何を求められているかを考えていた」と話す。沖縄・宜野座キャンプでは自分のメニューを組み、全体練習では補えないランニングを増やした。練習を終えれば、若手、ベテラン関係なく食事に出かけてコミュニケーションを図った。

プロ通算75勝目。移籍後初の記念星にも西は「勝つ、負けるというのはいつか来ることなんで」と意に介さない。それよりも「カードを取れて良かった。悲観せずに前を向けば、カードも取れる。いい雰囲気で甲子園に戻れる」とチームの勝利を喜んだ。グラウンド内外で投手陣を引っ張る若きリーダー。誰もがこんな選手を求めていた。【桝井聡】

 

▼FAで国内移籍した投手が移籍後初勝利を完封で飾ったのは、95年ダイエー工藤公康、99年中日武田一浩に次ぎ、西が20年ぶり3人目。阪神では初となった。

▼阪神への移籍後初勝利で完封は、64年若生智男(前大毎、トレード)、67年柿本実(前阪急、自由契約)に続き、西が52年ぶり3人目。FAで獲得した投手では球団初。