日本ハムは今季2度目の引き分けだった。ソフトバンク戦(長崎)は断続的な雨の中、上原健太投手(25)が中4日で今季初先発し、5回途中2失点(自責0)の力投。計7投手の必死の継投で延長戦に持ち込み、10回表が始まる直前に雨が強まり、そのままコールドゲームとなった。

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勝てなかったが、負けなかった。投手陣の踏ん張りで、今季2度目の引き分けに持ち込んだ。栗山英樹監督は先発上原をたたえた。「中4日だったけど、しっかり頑張ってくれた」。

上原は、最初から飛ばした。初回先頭の牧原への4球目の直球が、球場表示でこの日最速の146キロをマークするなど3回までパーフェクト。4日楽天戦で第2先発として3回2/3、65球を投げていた疲労を感じさせない内容だった。

悔やんだのは4回の2失点だ。1死無走者から今宮の三ゴロを浅間が悪送球(記録は失策)。初めて走者を背負うと続く内川に中前適時打。さらに四球と単打で満塁とされ、川島には同点犠飛を浴びた。「野手のエラーをカバーできるのは投手だけ。何とかカバーしたかった。失点してしまって浅間に申し訳ない」。経験のない調整期間での好投ながら、自らを責めた。

ただ、上原の気迫はリリーフ陣にも伝わった。雨が断続的に降る悪コンディションの中で、それぞれが先発の思いをつないだ。9回を託された浦野は不運な打球からピンチを招いた。栗山監督は「あれで点を取られるのなら、野球の神様からのメッセージとして、しょうがないと思って見ていた」という厳しい場面も、最後は信じて送った右腕がピンチを切り抜けた。

移動日だった8日、栗山監督は長崎の風頭公園にある坂本龍馬像を拝んだ。その像の左足は前に出ており、土台からはみ出している。「枠にはまるな、ということ」。さまざまな新戦術を用いる今季のチーム、そしてステップアップを目指す上原ら若手選手にも当てはまる、偉人からのメッセージを受け取って臨んだ試合。現状は乗り切れないチーム状況も、雨降って地固まる、起点としたい。【木下大輔】