超のつく本格派左腕の復活だ。DeNA今永昇太投手(25)が広島との今季初戦に先発。菊池涼の単打1本だけの完封勝利で2勝目を挙げた。序盤から140キロ台後半のクロスファイアで押し、終盤の勝負どころでも力勝負を選択。昨季の不調を完全に払拭し、リーグ3連覇の相手を悠々と上回った。10日の阪神戦で浜口が1安打完封勝ちしたばかり。強力左腕2枚を並び立て、上位をうかがう。

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今永は「カープは苦手。嫌な選手が多い。そういう相手に対して勝てたことは、今後いいイメージを持てる」と、はや完封勝利の先を見た。17年4月19日のシャットアウト以来の広島戦勝利。2度目の完封もカープ相手だった。

ラミレス監督に「スタートから自信に満ちあふれていた。120%。満点」と言わしめた。自信を取り戻したのは直球だ。15年のドラフトで最上位と認められたクロスファイア。キャンプ、オープン戦を通して「入団時の投球フォームを見つめた。あの時の直球を目指して」と繰り返し、投げ込んできた原点を、カープの4番鈴木誠也にぶつけた。7回1死走者なし。力勝負を挑んだ。

カウント2-2からの5球目、150キロ直球は外に入り、ファウルとされた。「アウトコースを捉えるのがうまい選手」と肝を冷やしたが「今まではどこか、迷いながら腕を振っていた気がするが」と逃げる気は毛頭ない。6球目、伊藤光が構える内角膝元へ、こん身の149キロ直球を放り込んだ。見逃し三振で上をいき、最後まで押し切った。

3月9日にヒントをつかんだ。侍ジャパンのメキシコ戦。未知の相手に2回4奪三振と結果を出した。「初めて対戦する打者。自分のデータはない。何も考えずに投げられたことで、もう迷わなくてもいいんだって気付いた」。きまじめな性格が迷いを生み、小さく縮こまってしまう悪循環を生んでいた。雄々しい真っすぐこそ生きる道と信じ、開幕から貫いている。

10日の阪神戦では浜口が同じ1安打完封。「9回に入る時の顔が違った」と糧にし、後輩に続いた。同カードで先発したドラフト1位の上茶谷、同3位の大貫の投球にも「いい波を持ってきてくれた」。「自分は毎週、一番いいピッチャーと対戦する。相手が降りるまで、自分は降りられない」。4年目の今永に風格が漂ってきた。【栗田尚樹】