この白星は、父への贈り物だ。オリックス榊原翼投手(20)が、念願のプロ初勝利を挙げた。日本ハムを相手に、6回を1失点にまとめた。守護神増井が最後の打者を三振に打ち取ると、笑みがこぼれた。「本当にうれしかったです」。育成ドラフト出身者では、球団初の勝利投手となり、胸を張った。

ウイニングボールは、病床の父に贈る。榊原が小学4年生のとき、父和夫さんが脳梗塞で倒れた。以来約10年、父は入院したままだ。当時は、野球を始める前。父が倒れてから、プロ野球選手になることを意識したという。榊原が会えるのは年に1回。今年は元日に顔を見せた。「話はできないんですが、顔を見たら笑顔を見せてくれるんです」。テレビも見られないため、榊原の活躍は親戚を通じて伝えてもらっている。

16年に育成ドラフト2位で入団。1年目はプロのレベルの高さに面食らった。1年目の秋季キャンプでは、課題の四死球の多さを克服するため、小松2軍投手コーチとフォームを一から見直したこともある。苦闘しながら、昨年開幕直前に支配下選手登録。昨季は5試合に登板し、今季は開幕ローテを勝ち取った。

日本ハムに勝ち越し、チームは4位に浮上。西村監督も「よくやってくれた」とその投球をたたえた。榊原は「育成でもできることを見せたいし、2桁勝利もしたい。優勝したいし自分もそこに食い込みたい」。もっと活躍して、野球ファンだけでなく、父も元気づける。【高垣誠】

 

◆榊原翼(さかきばら・つばさ)1998年(平10)8月25日生まれ、千葉県出身。浦和学院から16年育成ドラフト2位でオリックス入団。18年開幕前に支配下へ昇格し、シーズン終盤にはローテーション入りした。180センチ、90キロ。右投げ右打ち。

 

▽オリックス・若月(2回に適時打で榊原を援護)「今日こそ榊原に勝ち投手になってほしくて、必死で打ちました」