令和の虎を担う男が、新時代初日に輝きを放った。阪神は先手を奪われたが、ルーキー近本光司外野手(24)が5回に逆転の2点中前打。あこがれの赤星憲広氏に並ぶ阪神新人記録の12試合連続安打を重要な場面で決めてみせた。直後に二盗、三盗をマークするなど1試合3盗塁。走攻守の活躍でチームを今季初の4連勝に導いた。勝率5割復帰で3位浮上。平成と令和をまたぐ虎の反攻が止まらない。

    ◇    ◇    ◇

絶好調のルーキーが虎の令和初ヒットを刻んだ。1点を追う5回1死二、三塁。1番近本が広島野村の2球目外角スライダーをふり抜いた。「得点圏だったのでシンプルに。しっかりと踏み込んでセンターラインを狙っていった」。ズバリ狙い通りの一撃で打球がセンター前に弾む。チーム初安打が黄金週間の甲子園を熱狂させる逆転2点適時打になった。

近本ショーはこれで終わらない。続く糸原の2球目に快足を飛ばして二塁を陥れると、間髪入れず、3球目に三盗成功。「データとか、雰囲気とかを感じながらですね」。左打者が打席に立つ三盗は捕手が見やすいというリスクもあるが、独特の嗅覚でセオリーをも覆す。四球で出塁した7回にも1試合3個目の盗塁を奪った。

令和の時代にニュースター誕生の予感だ。5回のタイムリーで12試合連続安打をマーク。01年赤星が記録した阪神のルーキー連続安打記録に並んだ。矢野阪神のリードオフマンとして定着し、梅野に次ぐ打率3割2分7厘、チームトップの17打点、8盗塁。7回には中越え打で二塁を狙ったバティスタを、素早い送球で二塁アウトに。走攻守。すべての面でチームに欠かせない。

前夜、ナイターゲームを終えた近本が向かったのは神戸市内の斎場だった。大阪ガス前監督である竹村誠氏が4月28日、胆管がんのため、57歳という若さで亡くなった。近本を社会人野球の道に導き、熱く指導してくれた監督の通夜。その祭壇の前で誓った。「僕が出来ることはプロで活躍すること。見ていてください」-。天国の恩師に恥ずかしいプレーは見せられなかった。

ルーキーの快進撃とともにチームも今季初の4連勝。3カード連続で勝ち越しを決め、ついに借金完済。勝率5割復帰で単独3位に浮上した。矢野監督もニューヒーローを「どれもすばらしいプレー。近本の味が出ている。試合の中ですごく大きな状況や場面が多いので頼もしい」と絶賛する。近本の躍動が、令和時代を迎えた阪神の希望だ。【桝井聡】