愛する家族の声が、力になった。日本ハム杉浦稔大投手(27)が、西武戦(札幌ドーム)で5回1安打無失点と好投し今季初勝利。直球は主に140キロ台中盤も、丁寧にコースを突いた。

スタンドでは「モーニング娘。」出身の元アナウンサー、あさ美夫人も観戦。5回パーフェクトで降板した前回4月23日楽天戦(札幌ドーム)に続いて二塁を踏ませず、チームを約半月ぶりの2連勝に導いた。

   ◇   ◇   ◇

冷静な右腕の声が、心なしか弾んでいた。今季初勝利で本拠地のお立ち台に上がった日本ハム杉浦は「野手の方がこれだけ援護してくれたので、自分の投球をするだけでした」。超重量打線相手に5回を1安打1四球で無失点。真っ先に口をついたのは、チームメートへの感謝だった。

故障続きの体を考慮して、中17日でマウンドに上がった。負担を少しでも減らすため、あえて2軍戦では投げず、2度のブルペン入りで調整。今季初めての試みだったが「そんなに不安はなかった。間隔は空いたけど、投球フォームを確認したり有意義な時間だった」。4回以降、直球の威力が落ちてきたところで変化球を多投し、マスクを被った鶴岡のリードに応えた。

ドラフト1位でヤクルトに入団も、故障に泣いて16年の3勝が最高成績。昨季、右肩痛から約1年ぶりに実戦復帰したばかりで、今季初先発となった前回4月23日楽天戦では、5回パーフェクトながら降板しチームも敗戦。イニング数が短いのも、登板間隔が開くのも、故障のリスク回避のためだ。12日に再び出場選手登録を外れる予定で、吉村ゼネラルマネジャー(GM)は「焦って(間隔を)詰めるより、安定した投球を続けることが大事」。現場も、首脳陣も、エースに成り得る大器の覚醒へ一丸となっている。

この日、スタンドからは「モーニング娘。」出身で元テレビ東京アナウンサーのあさ美夫人ら家族が声援を送った。2児のパパの“育メン”は「家に帰ると、僕のことなんかお構いなしに泣いて大変だけど、それが癒やしになっているので、子どものために頑張りたい。活躍することが一番の恩返し」。チームに4月25日以来の連勝をもたらした右腕の快進撃は、ここから始まる。【中島宙恵】

▽日本ハム鶴岡(杉浦に)「途中で球速が出なくなったので、変化球を増やした。相手も真っすぐを待っていたので。もともと変化球は悪くない」