これが4番だ。広島鈴木誠也外野手(24)が、7-7の延長10回、13号サヨナラ2ランを放った。一時は5点差を追う展開となったが、反撃ムードを作ったのも鈴木だ。8回に12号ソロでのろしを上げると、9回にも中前適時打を放ち同点に追い付く道を作った。劇的な勝利で4連勝。首位巨人に1ゲーム差と迫った。

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4番が決めた。7-7同点で延長10回裏、1死一塁。ヤクルト中尾のフルカウントからの6球目を思い切りたたいた。打球は広島ファンの大歓声とともにセンターへ飛び込んだ。サヨナラ13号2ランだ。

劣勢の展開が続いても、大量ビハインドを背負っても、4番がナインを鼓舞し続けた。終盤に一挙5得点を奪い、試合を振り出しに戻した攻撃の先頭には、2イニング連続安打、連続打点の鈴木がいた。

5点ビハインドの8回。ヤクルトのベテラン五十嵐の初球144 キロ を強振した。火を噴くような鋭い弾道でバックスクリーンに突き刺すと、スタンドのボルテージは一気に上がり、広島ナインも息を吹き返した。

8回は追加点を奪えなかったものの、まだ4点差ある9回に再び4番が火をつけた。1死一、二塁でフルカウントからヤクルト梅野の低め真っすぐに食らいつき、中堅前にはじき返した。4番の諦めない姿に、ナインが続いた。西川が高めの球を上からたたきつけるような打撃を放てば、前の回からマスクを被る磯村は1死満塁から1点差に詰め寄った。楽勝ムードだったヤクルトを追い詰めると、2つの四球で同点。終盤だけで5点差を追いついた。

若き主砲は借金が最大8となっても、動じなかった。「チームの雰囲気はずっと悪くなかった。143試合は長いので連敗もある。連敗を続けずにやっていきたい」。3連覇した経験が生きている。ただ、今年は昨年とは違う。「チームが重い空気のときに流れを変えられる打撃をしたい。昨年は丸さんに頼っていた。それを今年は僕が。という思いです」。4番としての自覚、責任をより強く感じている。

5月に入り打撃が上向き、チームを上昇気流に乗せた。劣勢でも諦めない姿勢を示し、そしてバットで変える。真の4番に成長した鈴木が、ドラマチックな試合を演出した。【前原淳】