今秋ドラフト上位候補・海野隆司捕手(4年=関西)の攻守にわたる活躍で、東海大が逆転勝利した。

2-3の8回1死満塁で4番海野に打席が回った。7回に自身の三塁悪送球で同点を許し、その後逆転された。「これで打てなかったら自分のせいで負けてしまう」。強い気持ちで直球をたたきつけた。高いバウンドで三塁手の頭を越えると、走者2人が生還し、海野は一塁上でガッツポーズ。「人工芝で良かったなと」と白い歯を見せた。

三塁悪送球もあったが、この日は立命大の盗塁を2つ阻止。ともに「三振ゲッツー」だった。バントの三塁封殺もあり、持ち味の強肩を全国の舞台で披露した。

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東京ドームネット裏に集結した12球団スカウト陣の視線が、いっそう熱くなった。東海大、立命大ともプロの卵がずらりと並ぶ一戦。試合が終わり「誰が一番輝いていましたか?」と、楽天後関スカウト部長に尋ねた。返事は「海野だね」だった。

二塁送球が最速1・7秒台を誇る東海大・海野(うみの)隆司捕手(4年=関西)は、この日も自慢の強肩を見せつけた。3回、6回に二盗を阻止。ともに一塁走者がスライディングを開始するかどうかの時には、送球は二塁に到達済み。「守備は、私がこれまで見てきたアマチュアの捕手の中でもトップクラスです」。後関部長は近鉄時代も合わせるとスカウト歴27年になる。

巨人内田スカウトが「投げ方にリズムがあるから、安定して投げられる」と、その躍動感を褒めた。5回無死二塁。打者の送りバントが目の前でワンバウンドすると、海野は軽やかなフットワークとスローイングで走者を三塁封殺。バットに当たってから送球が三塁に到達するまでのタイムは、日刊スポーツの計測で2・69秒。あっという間だった。

すでに大船渡・佐々木朗希投手(3年)の1位指名を公言した日本ハムにとっても、気になる存在のよう。大渕スカウト部長は「送球の安定感は抜群。度胸も良さそうだし、勝負強い。野手は需要次第にもなるけれど、捕手が欲しいと判断した球団は高く評価するのでは」と話した。

ロッテ永野チーフスカウトは開口一番「抜群です」と言い切り「1年目から1軍でマスクをかぶれる素材」と評価した。7回1死二、三塁。海野の三塁へのけん制球が帰塁する走者と重なり、悪送球に。同点に追いつかれ、その後逆転された。しかし永野チーフスカウトは「あそこは投手を助けたい場面。チャレンジすることに意味がある」と意気をたたえた。海野も「ああいう場面で怖がってやっていると、自分の良さが出ない」と自身の長所をしっかり理解している。

大胆かつ繊細。よく見ると、右手指の爪が黄色かった。「ドーム球場だと(投手が)サインを見づらいかなと思って」。マニキュアを自分で塗ったという。「ドラフト1位の12人に入る」と明言するスカウトはまだいないが、誰もが「上位候補なのは間違いない」と認める。強肩捕手から名捕手へ。海野は階段を1歩ずつ上る。【金子真仁】