「たまたま…」ではない。ロッテのリードオフマン荻野貴司外野手が止まらない。初回の初球、高めの直球を迷わず振り抜き5階席までかっ飛ばす、今季3度目の先頭打者本塁打を放った。「待つのが嫌だったんで、まっすぐ来たら振ってみようと。狙って打った訳ではないので『たまたま』ホームランになっただけ。気にしていない」。更新中の連続試合安打を19まで伸ばした。

ここで止まる荻野ではない。同点とされた直後の3回無死一、三塁の第2打席。今度は初球のカットボールを逆らわず右前へ運ぶ勝ち越し打。「ホームランの後、大振りになりがちなので、右を意識して。結果的にヒットになったので良かった」と自己最多の6号弾の余韻に浸らず、チーム打撃に徹した。

意識したことを実行できる裏に、謙虚な姿勢がある。試合後、何を聞かれても「たまたま-」と繰り返した。打率3割3分8厘はパ・リーグトップ。好調を維持しながらも「ラッキーなヒットもあるので、そんなに調子いいという感じはないです」とてんぐになることはない。プロ9年間規定打席に達したことはない。丁寧を貫いた先に、まだ見ぬ未来が待っている。【久永壮真】