ほろ苦い、リスタートとなった。巨人から移籍した日本ハム吉川光夫投手(31)が、西武15回戦(札幌ドーム)で復帰後初先発も、2回1/3を3安打3四球3失点でKOされた。立ち上がりは快調に飛ばしたが、西武打線と2巡目の対戦となった3回につかまった。チームは同一カード3連勝を逃して勝率5割に逆戻りした。

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必死に左腕を振った1球は、無情にも高く浮いた。3回1死満塁。吉川が外崎に投げた初球だった。「甘く入ってしまったことが悔やまれます」。129キロのチェンジアップを、右中間へ運ばれた。球足が速く、一番深い場所へ飛ばされる間に、全走者の生還を許した。先制の3点適時三塁打となり、思わず天を仰いだ。続く山川にも8球粘られた末に四球を与えて、無念の降板となった。

ドタバタの中で迎えたマウンドだった。トレード発表から、わずか8日後に戻ってきた本拠地での復帰後初先発。また、今季は巨人でリリーフ専門として投げてきた。準備期間は少なく、難しい調整を強いられた中で投げたことをファンも分かっていた。降板時には大きな拍手が起きた。「ありがたいことです。野球場はどこも一緒ですが、札幌ドームはやっぱり特別な場所」と実感した。

立ち上がりは、見事だった。直球を軸に初回は2三振を含む3者凡退。2回は全てフライアウト。ストレートの威力で、強力な西武打線を押し込んだ。3回は対戦2巡目となること考慮し、変化球の割合を増やしたが、うまくいかなかった。「捉えられてないうちは、もっと真っすぐでいけば良かった」。反省の中にも力のある直球への手応えがにじんだ。

栗山監督も「覚悟して投げていた。ボールは本当に悪くなかった。球速以上に強さがある。それが吉川の特長」とあらためて評価した上で「リリーフで1イニングを投げるタイプではない」と断言。今後も基本線は先発起用していく方針を示した。吉川も「しっかり球数とイニングを投げられるようにしたい」と呼応した。次回先発は球宴明けとなりそうで、しっかりと調整する時間もできる。チームは先発ローテの立て直しが急務な状況だが、吉川なら必ず、その力になってくれるはずだ。【木下大輔】