とっさの「幻惑力」が経験を物語っていた。中日山井大介投手(41)が8連敗中の広島打線に的を絞らせず、6回2/3を2安打1失点で82日ぶりとなる今季3勝目を手にした。元巨人の上原浩治氏(44)が5月中旬に現役引退し、現在球界最年長投手。粘投で現役最年長星を飾り、「41歳ですけど、まだまだ41歳という年齢は感じない。まだまだしっかり投げていきたい」と若々しく宣言した。

「正直、調子は良くなかった」。序盤、制球のバラつきを自覚すると、即座に「悪いなり」の引き出しを開けた。「カウントを整えることができていなかった。ストライクを取りに行くのはやめよう、と。全球勝負球みたいな感じで。いつもとは違うスタイルでいった」。7イニングのうち6イニングで走者を許しながらカープ打線をかわした。

浮いたボールが目立ち、4四球を与えた。それでも失点は4番鈴木のソロのみだ。「ゴロを打たせてリズム良く」という理想とケンカすることなく、20アウト中11個をフライアウトでゲット。「カープは何を打てばいいのかなと思っている反応に見えた。いつもと違う山井を見せられたんじゃないかな」。状態によって変幻自在にスタイルを変える、熟練の技が光った。

与田監督は試合前、41歳の直球を「去年より良くなった」と評していた。大ベテランは今後も堂々とローテを張っていきそうな気配だ。ちなみに広島戦星は10年7月16日にマツダスタジアムで完封勝利して以来9年ぶり。「ウソでしょ? と思った。どんなに野球してなかったんや…」。自虐的に笑い飛ばす余裕がまた、味わい深い。【佐井陽介】