「マイナビオールスターゲーム2019」(12日東京ドーム、13日甲子園)の「プラスワン」投票による出場選手が9日、発表され、阪神原口文仁捕手(27)が最後の1人に選ばれた。

球宴は3年ぶり2度目の出場で、大腸がんから再起した背番号94が感謝の恩返しを誓った。ナイターは巨人に0-1で敗れて首位とのゲーム差が今季最大の8・5に拡大。16日にも自力優勝消滅の危機を迎えたが、不屈の男はネバーギブアップで戦い続ける。

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くちびるを噛み締めた。虎党の悲鳴、G党の歓声を聞きながら、無念さがこみ上げた。1点を追った9回2死一塁で、巨人田口のチェンジアップに空振り三振。巨人とのゲーム差は今季最大の8・5に開いた。「甘い球があったのに、それをミスショットしてしまった。それが一番(悔しい)です」。三振前のファウルを悔やんだ。

試合前にはうれしい出来事があった。「プラスワン」により、球宴出場の最後の1枠を決めた。大腸がんから再起し、絶望に打ち勝った不屈の男が、3年ぶりの夢舞台をつかんだ。「半年前を考えると、誰もが想像もしていなかったと思う。元気なところが(テレビに)映れば、それだけでもいい。そこまで欲は出さずに、元気にやるところを見てもらえれば。そういう気持ちで楽しみたい」。病魔と闘った冬を振り返った。

昨年末、人間ドックを受診し、大腸がんと診断された。まさか…。だれもが言葉を失う衝撃の告知にも、くじけなかった。家族、チームメートら待っていてくれる人のため、必ずまたバットを握る。グラブを手にする。その一念でグラウンドに帰ってきた。6月復帰戦でいきなりヒット。甲子園ではサヨナラ安打も放った。感動を呼んだ姿が、ファンの高い支持を得た。

晴れの舞台へ、矢野監督からは指令も出た。「普段、しぶといバッティングを見せてると思うけど、甲子園でホームラン、狙えばいいんじゃないかな」とエールを送った。伝え聞いた原口は、感謝しつつも「狙っても打てない。偶然を期待したいです」と応じた。

この日の敗戦で16日にも自力V消滅の危機が迫る。だが絶望的な状況に立たされても、あきらめなければ前を向ける。代打三振の悔しさを振り切り、原口は「またいい結果を出せるようにしっかり準備します」と力を込めた。不可能を可能にしてきた姿こそ、希望になる。