逆転の楽天が息を吹き返した。ドラフト1位ルーキーの辰己涼介外野手(22)が4回に右中間へ同点の適時三塁打を放つなど、2安打1打点、全打席出塁と地元関西で躍動。15日の初戦に続く今季23度目の逆転勝ちで6カードぶりの勝ち越しを決めた。後半戦を上々の形で滑りだし、19日からは仙台で首位ソフトバンクを迎え撃つ。

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肩口から入ってくるカーブを捉えた辰己の打球が、グングン伸びた。球団新記録の1試合7発が飛び出した6月14日の広島戦で本塁打を放って以来の長打は、貴重な同点打。「詰まりましたけど、いい対応ができました。久しぶりにタイムリーが打てて良かった」。続く茂木の適時打で決勝のホームを踏んだ。8回の右中間二塁打を含め、全4打席出塁と上位につなぐ9番の役割を全うしてみせた。

5月からスタメンに定着。球界トップレベルの強肩と広大なカバーエリアを備える中堅守備で何度も味方を救い、チームトップの9盗塁をマークするが「前半戦は悔しさしかありません」と首を振る。1カ月前に2割6分を超えていた打率は、試合前の時点で2割3分5厘。交流戦終盤には「僕、将来子どもができてもプロ野球選手にはしないと思います」と漏らしたこともあった。結果を残し続けなければ居場所を失う過酷な世界であることをあらためて実感。神経をすり減らしながら「でも、僕が野球を嫌いになることはない」と歯を食いしばってきた。

生まれ育った関西での試合には祖母や両親、いとこが応援に駆けつけてくれていた。「関西、やっぱりええなあと。気合が入ります」。練習中のBGMなどわずかな雰囲気の変化からテンションが上がり、実際に京セラドーム大阪では球場別最高となる打率3割8分9厘をマークしている。「自分は落ちるところまで落ちたので。その分、思い切りやれているところはあるかもしれません」。必死にもがき、壁を乗り越える。【亀山泰宏】