毎週第4火曜日は阪神の2軍で奮闘する選手にスポットを当てる「鳴尾浜便り」です。今回はホンダからドラフト4位入団したルーキー斎藤友貴哉投手(24)。

4月に1軍初登板も経験し、ファームでは主に抑えを任される期待の最速153キロ右腕。シーズンを戦い抜くプロの厳しさや苦い経験を乗り越え、再び1軍マウンドを目指しています。【取材・構成=奥田隼人】

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184センチ、90キロの恵まれた体格から、スリークオーターで威力ある球を投げ込む。再び1軍マウンドを目指し、懸命にファームで腕を振っている。

「1軍にいた期間はすごい楽しかった。毎日のモチベーションが違いました」 4月17日に初昇格。同19日巨人戦(甲子園)で1軍初登板した。2回で1安打3四球を許しながらも無失点に抑えた。その貴重な経験が自らを奮い立たせる。

「1軍で投げないとプロ野球選手というステージには立っていないと思う。そのために、ファームで結果を求めていけるように」

2軍では主にストッパーを任され、23試合に登板。チームトップの8セーブ(2敗)を挙げ、防御率3・47と奮闘中だ。5月までの17試合は自責点2(失点4)と順調にアピールを続けたが、6月以降は失点する試合も増えた。「1年間戦う上で勉強になった。これじゃいけないなと」。1年間コンディションを維持する難しさを痛感。食事での栄養面など、一層体調管理に気を配るようになった。

6月18日のウエスタン・リーグ広島戦(鳴尾浜)では、ドラフト1位中村奨への内角球が抜けて頭部死球。危険球退場となった。その後は内角を攻めることを「多少は気にした」というが、失敗を糧にする。「プロでやっていく中で、避けられないこともある。その中で自分が不安をどうやって克服していくか。当てたのは申し訳ないが、次はその残像、イメージを生かして自分の武器にできるような投球をしていけたらと思います」。後日、直接謝罪した中村奨からは「全然大丈夫です。逆に大丈夫ですか?」と言葉をかけられ「すごい励まされた」と気持ちを切り替えた。

前半戦を折り返し、プロでの手応えもつかみ始めている。「自分の決まったボールは自信を持って。その確率を増やしていくことがプロで活躍する上で大事。見えたものは大きい」。視界は明るく開けつつある。終盤戦での救世主となるべく、その時を待ちわびる。

◆斎藤友貴哉(さいとう・ゆきや)1995年(平7)1月5日、山形・東根市生まれ。小田島小3年時から軟式野球を始めた。山形中央2年夏は横山雄哉(現阪神)の控え投手として山形大会準優勝。甲子園出場はなし。桐蔭横浜大4年春に4勝1敗、防御率1・01でリーグMVPを獲得。ホンダ入社後は1年目からエース格として活躍。入団時には既婚で長男も誕生していたが、野球に専念するために球団寮の虎風荘生活を選んだ。184センチ、90キロ。右投げ左打ち。