阪神高山俊外野手(26)がビッグプレーで激闘勝利を呼び込んだ。同点の延長10回1死一、二塁。外野は前進守備を敷く。炭谷の大飛球が右翼へ上がる。阪神ベンチの誰もが思わず天を仰いだ。抜けた、やられた…。だが、7回裏から右翼で途中出場していた高山は、勝負を捨てていなかった。

我を忘れて必死に背走する。最後は身をよじらせてダイブ捕球。サヨナラ負けの窮地を救う「ザ・キャッチ」だ。大熱戦を制した矢野監督も「高山のプレーはちょっとあきらめたり、無理かなと思ったら捕れない打球。あきらめずに『何とか捕ってやる』気持ちで捕ってくれた。みんな頑張ったけど、あのプレーは一番大きかった」と絶賛した。

高山も言う。「『いかれた』と思いました。だいぶ前にいた。久しぶりのライトでした。打球が右打者で切れる。どれくらい切れたか分からなかったですが、最後に、追いつけてよかった」。プロ4年目。福留や糸井らベテランが外野の一角を占める状況だが、狙うのは不動のレギュラーだ。試合前の守備練習。スタメンでなくても筒井外野守備走塁コーチに欠かさずにリクエストする。「後ろに打ってください」。自ら前進した守備位置へ。背走キャッチの練習を怠らず繰り返し、勝負どころで生きた。

劇的勝利に貢献したがニコリともせずに言う。「どっちみち打たないと出られない。それ(守備)はそれで良かったけど、全然、納得していません」。この日は2打数無安打で悔しさを隠さない。燃えたぎる闘志を胸に秘め、定位置だけを奪いにいく。【酒井俊作】