42歳が激走した。阪神福留孝介外野手の昨年8月8日巨人戦(東京ドーム)以来の三塁打が、連勝を呼び込んだ。先頭で迎えた4回、巨人今村の直球を捉え、もうひと伸びで右翼スタンドインかと思われた大飛球。一塁ベースを回ったあたりから一気にスピードを上げ、三塁に到達。続くマルテの遊ゴロで先制のホームを踏んだ。

三塁ベースを陥れ、両ひざに両手をついた。1年ぶりの三塁打に「(そりゃ)走るわ…。勝ったからいいんじゃないですか」と試合後は、何でもない顔をしてみせたが、三塁ベース到達直後は肩で大きく息をしていた。この力走が、投手戦で何より大事な先制点を生み出した。自軍投手陣の勇気になり、首位巨人との3連戦に勝ち越した。

PL学園(大阪)の主将になったときから自分にも仲間にも厳しさを求め、妥協のない姿勢で福留はチームの先頭に立ってきた。アマでもプロでも、孤高の選手だった。だが12年オフの阪神入りから、球場という仕事場で行動をともにするパートナーができた。それが鳥谷だった。

常に練習し、常に万全の準備をして試合に備える。「トリほど練習する選手はいない」と、自分にも人にも厳しい福留が鳥谷の姿勢に目を見張った。一方の鳥谷は「福留さんは野球が大好きだから」と、福留の野球愛に目を細める。形は違っても、2人をつなぐのはチームへの献身。認め合える存在だった。

その鳥谷が8月31日、今季を最後にタイガースのユニホームを脱ぐことを明らかにした。阪神一筋で身を粉にしてきた鳥谷が、チームを去る日がやってくる。ついに阪神はAクラスまで2差に接近。「自分たちのやれることを1つずつやっていければと思います」と福留は先を見据えた。CSへの出場権を手にしたとき、鳥谷を送る日の景色は、必ず違うものになる。【堀まどか】