日本ハム清宮幸太郎内野手(20)が、希望のアーチを描いた。6日オリックス20回戦(札幌ドーム)で3点リードの5回2死一塁から、右越えの6号2ラン。出場11試合ぶりの1発は、ちょうど1年前に起こった北海道胆振東部地震の被災者に届けた。チームは連敗を「8」で止め、最下位を脱出した。

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希望のアーチで照らした。清宮が、力強い弾道で本塁打を描いた。3点リードの5回2死一塁。山岡の4球目。見極めたスライダー132キロを振り抜いた。「入るか分からなかったんですけど…」。右翼の最前列ギリギリに吸い込まれた。6号2ラン。「久々に出て良かった」と47打席ぶりの快音を喜んだ。今日は特別な日。普段以上に、強く勝利を望んでいた。

まだ、記憶に刻まれて新しい。1年前の9月6日。北海道を最大震度7が襲った。北海道胆振東部地震。清宮は午前3時7分の震災時、札幌市内の合宿所で被災。深夜の停電、断水などで騒がしさに包まれる中、清宮は1人熟睡していた。驚く周囲をよそに、プロ1年目の当時から、肝っ玉の据わった姿で体力温存に努めていた。翌日には、楽天との試合を控える仙台へ移動。すぐさま自主練習を敢行していた。

清宮 こうして(球場に)来てくださる方たちがいるから、自分たちもこうして野球が出来ている。まだまだ(被災者の)傷は癒えないと思うんですけど、その中で1年たった今日、こうして勝てたのは皆さんのおかげかなと思います。

特別な意味もこもった本塁打を、栗山監督は試合前練習のフリー打撃の時点で予感していた。「今日は打撃練習で、しっかり振ろうとしていた。こういうこと(本塁打)が予想出来る練習だった」。手放しで評価せず「なぜ、そう出来たかを考えてほしい」と、さらに宿題を与えた。

負の連鎖を断ち切る一撃にもなった。チームは8連敗でストップ。最下位から脱出した。この日は甚大な被害を受けた安平町、厚真町のファンも球場で観戦。力を与える1発に「やっぱり、それが仕事なので。勇気を与えられるプレーが出来れば」。プロ野球選手の使命を再確認し、バットを握る手を一層強くした。【田中彩友美】