「3秒11」記者のストップウオッチは、驚異的な数字を示していた。2-0の5回1死、中大・五十幡亮汰外野手(3年=佐野日大)は四球を選ぶと、1ストライクからの2球目にスタートを切った。動きだしから二塁到達までの時間が、冒頭の数字。プロレベルの二盗成功の目安とされる3秒2を上回った。「いいスタートが切れたと思います」と納得の表情だった。

相手の警戒も上回った。1ストライクから、亜大の捕手草部は外してきていた。もちろん、五十幡のスタートは視界に入る。立ち上がって捕球し、すぐに二塁へ投げた。送球が少し三塁寄りにそれたとはいえ、「走ってくる」と分かっていても刺せなかった。得点圏に進んだ五十幡は、続く内山の適時打で3点目のホームを踏んだ。

手動計測で50メートル5秒6、機械では5秒8。俊足ではない。超俊足だ。何しろ、中学時代に陸上の全国大会に出場し、100メートル走と200メートル走でサニブラウン・ハキームを破り、優勝したほど。ただ、1シーズンの盗塁数は、ここまで3が最多。「なかなかスタートが切れなかった」からだ。

課題克服へ、春季リーグ戦後のオープン戦で積極的に仕掛けた。「好機には、どんどんいこうと。配球も頭に入れました」。いかに、いいスタートを切るかをテーマに取り組んだ。初回にも二盗を決め、牧の二塁打で生還。成果を出した。

清水達也監督(55)は「特長を出してくれた」と目を細めた。安打は打てなかったが、五十幡には誰にも負けない足がある。「スタートが多少、遅れても、足に自信を持っていきたい。2ケタはいきたい」と10盗塁を目標に掲げた。【古川真弥】