西武が神がかった結末で、初マジックを点灯させた。延長11回、木村文紀外野手(31)の外野フライをロッテ守備陣が落球。記録は失策だが“ランニング本塁打”のような形で生還し、2試合連続で今季8度目のサヨナラ勝ちを収めた。

8回には森友哉捕手(24)が一時勝ち越しの適時打でチーム3人目の100打点到達するなど、総力戦で3連勝。これで3年連続3位以上が確定しクライマックスシリーズ(CS)進出が決定。今季2度目の首位浮上、134試合目で優勝マジック9が点灯した。

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打球が神隠しにあったのか。見失うように打球を追う守備陣の姿に、木村はスピードを加速させた。左翼加藤と中堅荻野が交錯。落球を見届け、ダイヤモンドを1周して生還した。記録は左翼失策だが、まるで“サヨナラランニング本塁打”のよう。想像を超えた結末に、打って走った木村は「神様が味方してくれたんじゃないかな」と言い、辻監督も「神風が吹いた」と口をそろえて驚いた。

午後1時から始まったデーゲームでの延長戦。4時間半の長期戦に、メットライフドームのスタンドと屋根の間から見える景色は、次第に薄暗くなっていた。木村も外野手だから知っている。「見えづらい。夕方になると、外が暗くなってボールが消えるんですよ」。そこに高々と舞い上がったフライ。しかも左中間。いくつもの条件が重なり合って、神懸かり的な“サヨナラ打”が生まれた。

想像はしていなかったが、準備はしていた。木村は球場入りをすると、まずは2本の試合用バットを必ずベンチ前に置く。乾かすためだ。「乾燥させないと、打感がグチャッとなるんです。乾燥させた方が、打球が飛んでくれるから」。ベンチ裏ロッカー室は、梅雨時には、バットに水滴がつくほど湿度が高くなる。日々の準備を欠かさなかったバットに、神が宿った。

1日で陥落した首位に4日ぶりに返り咲いた。ソフトバンクから消えた代わりに、マジック9が点灯。3年連続Aクラスも確定した。同監督は「9試合で(マジック)9。まだまだ向こうにいく可能性がある。あってないようなもの。あと9試合タフな試合になる。必死な選手たちは心強い」。最大8・5ゲーム差からの神がかり的な首位再浮上。優勝が見えてきた。【栗田成芳】

▽西武源田(8回に右翼前へ落ちる2点適時打)「とにかく前に飛ばそうと、三振だけはしないようにした」