ランディ、めっちゃ、ありがとう。今季限りでの現役引退を表明していた阪神ランディ・メッセンジャー投手(38)が、引退試合に臨み、打者1人と対戦。数々のNPB外国人投手最多記録を誇る右腕のラスト登板。全球直球勝負で三振を奪った。来日10年、虎党のハートを揺さぶる熱投を重ねてきた男が、マウンドを去った。

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「ピッチャー メッセンジャー 背番号54」

最後のアナウンスが響くと、優しい拍手に包まれた。10年間戦い続けたマウンドでメッセンジャーがあふれる阪神愛を伝えた。

「日本での10年間、本当に素晴らしく一生忘れることはありません。タイガースファンは本当に、世界一。イチバンデス。アリガトウ、ホントニ、メッチャ、アリガトウ」

先発で1番大島に投げ込んだ6球は全て直球だった。最後はフルカウントから、146キロ直球で空振り三振に。通算263試合登板。積み上げた三振は1475になった。

「日本に来て中継ぎ、ブルペンから自分のキャリアがスタートして。最後に先発で終われたのは、本当にクレイジーな感じ。この瞬間というのは、忘れることがないと思います」

いつも愛と責任感に突き動かされてきた。17年には右足腓骨(ひこつ)骨折に負けず、戦列に帰ってきた男だ。今季は「自分自身が思ったほど貢献できていないストレスがある」ともらしたこともある。チームへの貢献がすべて。米国生まれのサムライだった。

若手投手1人1人に気を配った。グラウンドだけではなく、食事の席でも「あの選手は、まだ練習足りないね」「あの子は、あんまり走っていないね」と口にするほど。成長してほしいという愛がいつもあった。そして誰よりも汗をかいた。遠征先では全体練習が始まる前に、球場周辺や町中でランニング。周囲が「一番走っている」と舌を巻く努力をもとに、言葉で、背中で、マウンドで虎投を引っ張ってきた。

塗り替えた数々の記録以上に記憶に残った。いつも全力で戦う姿が美しかった。「チームメートたちと素晴らしい野球人生を送れたこと、感謝しています」。仲間は30日に運命の1日を迎える。「自分自身を見失わないようにそこだけ大事にして、そうしたら絶対いい結果が待っている」。自身が届かなかった日本一。ラストメッセージは友へのエールだった。【磯綾乃】

○…メッセンジャーが試合前にサプライズを受けた。グラウンドに出ると選手、スタッフ全員が「I'm Finally 日本人」と描かれたTシャツを着用していた。昨オフ、国内FA権を取得して外国人枠を外れたことを記念に作らたもの。メッセンジャーは「あのTシャツを作らせてもらった時に、あそこまでみなさんに気に入ってもらえるとは思ってなかった。そのTシャツでサプライズしてくれて、本当にうれしかった」と大喜び。笑顔で記念写真に収まっていた。

○…メッセンジャーは今後について聞かれると「これまでは子どもたちが、特に一番上の子は11歳になるが、自分のキャリアを声援で支えてくれた。スポーツを教えて、今度はお父さんの方から子どもたちに恩返しをしたい」と話した。引退セレモニーではベネッサ夫人に「そして最愛の妻ベネッサ、あなたは私のすべてです。グラウンドでも、グラウンド外でも、いつも背中を押してくれて、本当にありがとう」と感謝。濃厚なキスをして甲子園を沸かせた。

○…試合後のセレモニーでメッセンジャーに花束を贈呈したのは、野球での女房役の捕手3人だった。梅野、原口、坂本それぞれが花束を手渡した。バッテリーを組み、大島を三振に仕留めた梅野は「1球1球、かみしめてしっかり捕ろうと思った。晴れ舞台で最後を三振で締められた。誇りに思っています」と万感の思いで送り出した。

○…15年から選手メニューの5年連続NO・1を誇る「メッセの豚骨醤油ラーメン」が、メッセンジャーのラストゲームで爆発的に売れた。この日は通常より店舗を増設して販売されたが、いつもなら1試合で200杯程度の売れ行きなのが、この日はファンも引退を惜しみ「食べ納めということで」(球団関係者)、約1600杯も売れたという。球場グルメでも愛された助っ人ぶりを発揮した。