「メッセ魂」であと1勝! 阪神がクライマックスシリーズ(CS)進出に王手をかけた。ランディ・メッセンジャー投手(38)の引退試合でナインが奮起。近本、北條が好守で先制を阻むと5回以降、代打陽川の先制アーチや高山、梅野らの適時打で流れを引き寄せた。投手陣も7人の継投でリードを守りきり快勝。公式戦最終戦の30日中日戦に勝てば、2年ぶりのCS進出が決まる。

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魂を揺さぶられるメッセンジャーの6球だった。プレーボール直後の甲子園。誰よりも勝利に執念を燃やした右腕のラスト登板。守る野手も、ブルペンでモニターを見守る救援陣も武者震いした。試合後の矢野監督の言葉が思いを表していた。「めちゃくちゃうれしい。勝つ負けるのは思い出として全然違う。ランディの最後に勝てたのは大きい」。剛腕にささげる1勝を全員野球でもぎ取った。

序盤から球際での執念が光る。1回2死二塁。ビシエドの詰まった打球は中前に落ちそうだった。だが、近本が猛チャージで地面スレスレの好捕だ。5回2死二塁では大島の三遊間へのゴロを三塁北條がダイブ。好守連発で先制を阻み、全員が闘志をつないだ。

矢野監督も攻めた。2回2死一、二塁の先制機は2番手高橋遥に代打原口を起用。得点ならずとも、攻めに攻めた。5回は2死走者なしで代打陽川が先制弾。鮮やかな用兵的中だった。6回は柳に襲いかかった。1死満塁で高山が打席へ。左腕福に継投したが前進守備を破る中前適時打で2点を加点。梅野も初球を中前に運び、1点追加だ。

高山 僕の技術で打ったヒットではなく、メッセへの思いと応援してくれているファンの方々の声援が後押ししてくれた。

梅野 (正捕手定着前)自分が打つからランディが指名してくれて試合に出られるようになった。だから打って活躍したいと思った。恩返しできて良かった。

4試合連続完封はならなかったが、42イニング連続無失点での快勝。一丸で去りゆく助っ人に白星を届けた。負ければ終戦の窮地で連勝。指揮官は「プロだからこそ、こういう緊張する部分も楽しめたらスゴイ。苦しいときでも楽しめたらスゴイし、楽しいときも、もっと楽しめたらスゴイ」と伝えてきた。昨年10月の就任当初から唱え続けた信念だ。驚異の粘りで今季2度目の5連勝。3カ月ぶりに勝率も5割復帰。「やるしかないんでね。楽しみにしています」と指揮官。勝てばCS。引き分けか負ければ敗退。生きるか、死ぬか。30日の大一番を全身全霊で戦う。【酒井俊作】

▽阪神陽川(5回2死から代打で先制3号ソロ)「何としても塁に出ようと思っていたけど、最高の形になった」

▽阪神大山(1点リードの6回1死一塁では右中間二塁打を放ち、この回3得点をお膳立て。4点リードの7回には14号2ランを中堅左席に運び)「負けたら終わり。1点でも多く取らないといけないと思っていました。ランディとは3年間一緒にやってきて、僕がミスした時も本当に優しく声をかけてくれた。恩返しも含めて、感謝の気持ちがホームランになりました」

▽阪神北條(両チーム無得点の5回表2死二塁、1番大島の三遊間ゴロに飛びついて先制点を許さず)「アウトにできて、結果的に流れが(相手に)いかなかった。明日、頑張ります」