ソフトバンク工藤公康監督の「名タクト」が、さえわたった。2点をリードして迎えた7回に、一気の集中攻撃で4得点。「代走」「代打」「トリックサイン」と指揮官の采配がズバズバと当たった。「みんながつなぐ意識を見せてくれた。後半にそういう攻撃ができてよかった」。試合後の勝利インタビューでも声が弾んだ。

先頭打者・松田宣が二塁打で出塁するとスイッチを入れた。「代走周東」。俊足を送り出した。続く内川には送りバントのサイン。打球は投手正面でアウトのタイミングだったが、周東の俊足が生きて犠打になった。追加点を狙って、甲斐に代打長谷川。巨人が左投手へとスイッチすると、迷わず代打の代打「左殺し」の川島を告げた。

四球で1死一、三塁とチャンスを広げると、最後の「仕掛け」だ。牧原の初球に「偽装スクイズ」。わざとバントの空振りで、一塁走者の盗塁を援護。スクイズと思った巨人バッテリーは三塁走者を警戒したが周東はスタートを切っていなかった。まんまと1死二、三塁のチャンスをつくると、あとは打線に火がつくのを信じるだけだった。その期待に応えるように牧原、今宮、柳田と3連打。結局、この回に4点を奪った。

工藤監督 これからも後悔しないよう、しっかりと決断していきたい。1戦1戦、力を合わせて頑張ります。

監督就任後のヤフオクドームでの日本シリーズはこれで9連勝。進出した日本シリーズでは敗北がない。現役時代に11度の日本一。監督となって昨年まで3度日本シリーズを制している。短期決戦を知り尽くし「日本一3連覇」に執念を燃やす工藤監督の「名タクト」は、初戦からエンジン全開だった。【浦田由紀夫】

▼ソフトバンクが第1戦に勝利。ヤフオクドームでは中日と対戦した11年第7戦から13連勝となり、昨年つくったシリーズの同一球場連勝記録を伸ばした。これでポストシーズンは楽天と対戦したCSの1S第2戦から7連勝。同一年のポストシーズンで7連勝は、75年阪急が近鉄とのプレーオフ●○○○、広島との日本シリーズ△○○△○○で7連勝して以来、44年ぶり2度目のタイ記録だ。なお、過去69度のシリーズで先勝したチーム(△○を含む)は43度優勝しており、V確率は62%。