楽天高梨雄平投手が「イチ流」を体現した。楽天生命パーク宮城の室内練習場で行われた「パーソル パ・リーグTV野球教室」に岡島、森原と参加。地元の野球チームに所属する75人の小学生と約2時間、向き合った。

一塁線上に並んだ子どもたちを前に、左腕が実演した。「真っすぐ上げて、真っすぐ踏み込む!」。右足を上げ、軸の左足1本で立った状態を3秒キープし、右足を投げたい方向へ出す。投球動作の流れを簡単な言葉と動きで伝えた。

握りもひと工夫ある。親指、人さし指、中指で球を支える基礎から、薬指を加えた「4本指」も教えた。手が小さくてうまく握れず、わしづかみする子どもも見られる中、縫い目に指をかけてスピンをかける基本の「き」を抜き出した。

幼心に刻まれた記憶が今につながる。小学生の頃、東京ドームでのイチロー野球教室に参加した。フライ捕球、ベースランニング…「技術は覚えてない。『あの時は楽しかったな』だけが残ってる」。だからこそ「先生じゃなく友だちになる」。練習後は地べたに座り、同じ目線で子どもたちの質問に答えた。

野球人口の減少がうたわれる中、グラウンドの外でやれることは無数にある。「ヘタな野球教室より、お相撲さんに投げられた方が記憶に残る。裾野を広げる意味で『野球は楽しいよ』というのが伝わってくれればいいと思います」。一生忘れられない時間の積み重ねが、未来の野球界を開いていく。【桑原幹久】