来季の覇権奪回を目指す日本ハムは、1軍首脳陣に新たな顔ぶれが加わる。「新任コーチに聞く」と題し、3回連載で紹介する。第1回は14年ぶりの復帰となる小笠原道大ヘッドコーチ兼打撃コーチ(46)を取り上げる。

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想像していなかった未来が、現実となった。小笠原ヘッド兼打撃コーチは「出て行った時点で、こういう立場で戻ることを考えてはいなかった」という。北海道移転3年目の06年、チームを日本一に導くとオフに巨人へFA移籍。北海道を去ったことで、今後の野球人生が古巣と交わることはないと覚悟していた。「それでも球団は動いてくれた。感謝しかない。ここからは、しっかり北海道に恩返ししたい」。チーム再建の切り札。心の中に閉じこめていた熱い思いを、解き放つ時がやってきた。

チームは2年連続で夏場に失速。自身のように心身ともタフな選手育成へ、沖縄・国頭での秋季キャンプから始動した。特に野手陣に対しては、日が暮れるまで肉体を追い込ませた。「2週間で土台はできないので、シーズン中も毎日継続することが必要。それが2年、3年と続いて初めて土台ができる」。徹底的に鍛え上げていく覚悟だ。

優勝を目指す中で、大事にすることは何か。「基本的には守れないといけない」。北海道移転後に築いた、守り勝つ野球が基盤。打線も「打てる選手を当てはめるのではなく、守備の布陣を決めて打順を組む形が理想だと思う」と思いを巡らしている。若手も主力も、分け隔てはしない。来年で31歳となる中田にも「まだまだ動ける。キャプテンではなくなったけど、中心選手はグラウンドにずっと立っていなくてはいけない」とゲキを飛ばした。

今季リーグワーストタイだったチーム盗塁数(48個)も改善ポイントと見る。「ただ、打てばいいというわけではなく、走塁に対してもっと意識を高く持たないといけない」。考え方次第で、走れるチームに生まれ変われると説く。「もしレギュラーの選手が1人10盗塁を目指せば、チームで90盗塁になる。1カ月に2盗塁すれば、シーズンで12盗塁。もっと言えば2週間に1盗塁で目標が達成できる。そう考えれば難しくはない」。意識改革も再建には重要になる。

約1カ月後には春季キャンプも始まる。「監督から選手に、2月1日に合わせて体を作ってきて下さいとアナウンスをしてもらっている。それをイメージしながら、キャンプの練習プランを練っていく」。チームがどう生まれ変わっていくのか。小笠原道大ヘッド兼打撃コーチの手腕に注目だ。【木下大輔】