“チーム浅村”で栄冠をつかむ。楽天浅村栄斗内野手(29)が13日、愛媛県内で自主トレを公開した。

西武から移籍2年目のオフは、素質を見込んだ後輩のオコエ、内田、フェルナンドを引き連れた。自身も若手時代には中島(現巨人)を師と仰ぎ、一流選手への礎を培った。東京五輪でも侍ジャパンの主軸を期待されるスラッガーが、惜しみなく経験、知識を伝承する。

   ◇   ◇   ◇

浅村が“門下生”を見入らせた。青空の下でのロングティー。一塁線上から左翼席を目がけ、足場を踏み固める。トスされた球をガシャン!とまくり上げ、お手本のような放物線を周囲に目で追わせた。約1時間半、黒と赤茶色のツートンカラーのバットを熱を帯びながら振り込んだ。

おそろいの黒地のTシャツ。左胸に白字で「TEAM浅村」と刻んだ。5年目を迎える愛媛での自主トレ。移籍2年目の今回から同じ右打ちの楽天の後輩を引き連れた。外野手の4年目オコエ、5年目フェルナンドには志願され、内野手の6年目内田は自ら声をかけた。成長が待たれる大器たちへ「期待されている3人だと思う。ちょっとでも助けになれば自分自身もうれしい」。

親心の裏に、未成年の頃から憧れる恩人がいる。西武時代の1年目オフから4年間、チームの大黒柱の中島と自主トレをともにした。「あの人がいなかったら、こういうスタイルで野球をやっていない。中島さんとできたから、今の自分がある」。長髪をなびかせ、逆方向へ白球をかっ飛ばす先輩を目で、耳で追った。スポンジのように吸収してメジャーへ飛んだ師の後釜を担い、背番号3も継いだ。2度の打点王を獲得し、1度のリーグ優勝を経験。後進育成の重要性を体感したからこそ、チームの勝利へ労を惜しまない。

自主トレは午前9時半スタート。午前中は体幹トレーニングに終始し午後からノックやティーなど技術練習。午後4時半ごろに切り上げ、夜は同じ釜の飯を食らいながら野球談議を重ねる。「自分の感覚を教えるのは難しい。どうやって伝えたら分かるかな、と考えることで得られるものもある」。今年11月で30歳。人を作り、男を上げる。【桑原幹久】

○…“門下生”の3選手も師の背中を懸命に追う。オコエは浅村に自主トレ参加を志願し「右方向の打球が弱いのが課題。『しつこいな』と怒られるくらい聞きに行きたい」。同じく志願参加のフェルナンドも「2桁狙える3人だと言われているので、そこは絶対にクリアしたい」と意気込む。浅村から誘いを受けた内田は「声をかけてもらってありがたい。死に物狂いで頑張りたい」と奮起を誓った。

○…浅村が東京五輪での金メダルへ足元を見つめ直した。昨年11月のプレミア12で侍ジャパンの主軸を担ったが「(メンバーに)選ばれるように、まずはシーズンが大事。とにかく楽天が優勝するためにしっかりやらないといけない。それが最優先」と言い切った。この日着用したスパイクは青地に金色のメーカーロゴ。「“五輪仕様”か?」との問いに「全く関係ない。たまたまです」と笑った。