ソフトバンク甲斐拓也捕手(27)が、天国の大捕手へ追悼弾を放った。今キャンプ初紅白戦(アイビー)の2回初打席。左中間へ美しい放物線を描いた。11日に84歳で亡くなったホークスOB野村克也氏の背番号19を受け継ぐ男が、「覚悟と自覚」をバットで証明。「甲斐キャノン」が課題の打撃力もアップさせ、「19」の伝統を引き継ぐ強肩強打の超一流捕手を目指す。

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ホークスの「19」が、誇らしげにダイヤモンドを1周した。甲斐が万感の思いを込め、本塁を踏んだ。今キャンプ初の紅白戦。2回1死一塁で回ってきた20年初打席、初スイングで両軍初安打となる初アーチ。いろんな思いを込めた会心の追悼弾に、今季にかける決意と覚悟が表れていた。

甲斐 今年はやらないといけない。求められるものが大きいけど、自分で超えていかないといけない。今まで以上の数字を残さないといけないし、責任と自覚をもってやりたい。

11日に亡くなった野村氏がつけていたホークスの19番を今季から背負う。訃報を聞いた当日は、「ユニホームを見てほしかった」と涙した。思いはバットに乗せた。2回の初打席は尾形の143キロの直球を振り抜き、左中間最深部の芝生席に運んだ。4回の第2打席も二塁打。1発を含む2打数2安打2打点。今季、打てる捕手への大変身を図る男が、この日の紅白戦で“3冠王”の結果を出した。

打てる捕手へ。キャンプでは金コーチングアドバイザーの指導も受け、打撃向上を図っている。「まだまだですが、手応えは感じている。ただこれからもっともっとやらないと」。城島球団会長付特別アドバイザーからも「体の使い方、バットの使い方も教えてもらった。スイングは自分が思っているより速いんだから自信をもっていけ。大丈夫だと言ってもらった」。憧れの人からの「お墨付き」も自信になっている。

昨年12月、背番号変更を決めてから、19の文字が入った特製Tシャツを作り、愛車のナンバーも「・・19」に変えた。「かっこいいでしょう?」。覚悟を持ってスタートしたキャンプで訃報に触れ、鷹の19番を背負う責任も感じている。

甲斐 野村さんとは連絡取ることができなかった。19番の姿をどう思ってくれたのか分からないけど、本にも自分の名前を出してくれたり、気にかけてくれていたので…。その気持ちに応えられたかなと思う。

快晴の宮崎アイビースタジアム。背番号19の後輩が示した決意と覚悟は、天国のノムさんに届いたに違いない。【浦田由紀夫】