虎の超人が「復活指数99・8%打」だ! 昨秋に左足首を手術した阪神糸井嘉男外野手(38)が23日、198日ぶりに実戦復帰して即マルチ安打を放った。オープン戦の広島戦(コザしんきんスタジアム)に「1番右翼」で先発。初回のファーストスイングで大瀬良から左前打、3回も右翼線への二塁打で2打数2安打とした。走塁では負傷の原因となったスライディングも軽快にこなした。「ヨシオ100%」での開幕へ順調なスタートを切った。

  ◇    ◇    ◇

糸井が限りなく万全に近い状態で帰ってきた。左足首の負傷で実戦を離れてから198日。完全復活への号砲はプレーボール後すぐ、打ち鳴らされた。第1打席。開幕投手に内定している広島大瀬良をいきなり捉えた。カウント1-0の外角低め直球に逆らわず、ファーストスイングで左前にはじき返した。真っさらな打席での初振り初安打。「一発目から気合が入ったので、よかったです。うれしいね」。笑みがこぼれた。

3回の第2打席は大瀬良の135キロ変化球を右翼線へ引っ張った。慎重に一塁を蹴り、全力疾走で二塁に到達した。初回の出塁後は昨年の負傷の原因となった二塁へのスライディングも敢行。「ちょっと気にしつつ(塁を)回ったりしましたけど『いけるな』というのはあります。強く振れたし、強く走れた。順調にはきていますけど(患部を)気にしつつ、ちゃんとやっていきたいなと思います」。昨年12月の契約更改で「98%」と答えた回復度については「99・8%」と胸を張って言い切った。

昨年8月9日広島戦で二盗の際に左足首を痛めて離脱。その後、腱(けん)に新たな損傷も見つかり、チームがクライマックスシリーズを戦っていた10月にメスを入れた。リハビリ生活中は「2カ月、歩くだけで痛かった時期があった。相当、不安というか、またグラウンドに戻れるかな」とずっと思っていたという。「みんなとこうやって野球ができて、ちょっと幸せでした」。苦しい期間を乗り越えてきた分、グラウンドに立ってプレーできる喜びを素直に受け止めた。

この日の糸井は今キャンプ名物の1日キャプテンも務めた。試合前の円陣では「もうね…言うことはないです。サイコーの1日にしましょう。レッツゴー!」とハイテンションで声出し。東京五輪の影響で例年より開幕が早いこともあり、阪神移籍後最速のオープン戦出場に向けて自らにも気合を入れていた。「残り1カ月を切りましたけど、もうケガせずにしっかりやっていきたいなと思います」。3月20日開幕戦へ「100%」の仕上げを目指す。【奥田隼人】

▽阪神矢野監督(糸井の実戦復帰について)「体も元気。しっかり2打席でヒット2本打つのもたいしたもん。嘉男らしさはしっかり出たと思う。こういう感じでやってくれれば」

▽阪神清水ヘッドコーチ(糸井について)「ベースランニングとか気にしてるようには見えたけど、そこら辺を戻していってくれればそれでよし。今日はOKだね」

◆糸井の歩み 昨年8月9日広島戦で、二盗を試みてスライディングした際に左足を痛め退場。都内の病院で「左足首の関節鏡視下クリーニング術及び靱帯(じんたい)補強術」を受け、10月9日に退院した。今キャンプでは慎重に練習をこなし、2月7日には本格的にベースランニングを開始。19日には初めて全体練習にフル参加し、全力でのベースランニングやシートノックも難なくこなした。

◆糸井の阪神移籍後初実戦 過去3年はいすれも3月半ばに初実戦を迎えていた。オリックスからFA移籍初年度の17年は右膝関節炎のため、3月15日初戦と出遅れた。18年は順調に推移したが、3月13日に初実戦。19年は右膝の炎症で、3月16日までずれ込んだ。2月中の実戦出場は移籍後最速となった。