全国の球児たちへ届け-。巨人岡本和真内野手(23)が、思いをバットに乗せた。1点を追う4回2死二塁。ソフトバンク和田のど真ん中速球を見逃さず、雄大なフォロースルーで無人の左翼席中段へアーチを描いた。

ダイヤモンドを一周すると、先に本塁生還した二塁走者の坂本からお辞儀された。7回には右翼フェンス直撃の二塁打。プロ野球開幕の延期が決定する中で「僕はいつ、開幕してもいいと思っている。開幕に合わせているつもりはない。1年間を通して活躍できるように練習している」と頼もしい言葉を並べた。

悔しさをかみしめる高校球児へも、同じ思いだった。新型コロナウイルスの影響で、センバツ中止が発表された。自身は智弁学園(奈良)3年時、14年の86回大会に出場。1回戦(対三重)で1試合2発を記録した。奈良の高校球児から巨人の2代目「若大将」へと成長した男は「3年生にとっては、初めて出る高校もあったかもしれない。もちろん残念な気持ちだけど、それが全てではない。逆に夏の大会に向けてのモチベーションにつながるかもしれない」と語った。

開幕だけが全てではない。「3・20」から変わる新たなスタートの日に向けて「僕は調整しようという気持ちは1ミリも思っていない。開幕がいつか、分からないからこそ、悔いなくやれたら」と日々を全力で生きる。今日という時間は返ってこない。目の前にある一瞬を全力でやるだけ。その後ろ姿で、球児へ夢を届ける。【栗田尚樹】