野球のセオリーは本当か? 一般的に投手は、2球で2ストライクに追い込んでも、次の球はボール球を投げるケースが散見される。1球外すことに意味があるのか。3球勝負するべきなのか。プロ野球(NPB)やMLBのデータを徹底検証した。【特別取材班】

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NPBのカウント別打率を調べた。昨年は0-2で1割4分5厘、1-2で1割6分8厘、2-2で1割8分7厘、3-2で2割1分6厘と、ボール球が1球増えるごとに2分から3分、打率が上がる。データからは「1球外すことは打者を有利にするだけ」と言える。2ストライクだけでなく、1ストライクや0ストライクも同様。この傾向は、昨年に限ったことではない。さらに10年ずつ、1989年(平元)までさかのぼって検証しても、一貫して同様の結果となった。

カウント別打率では、1-2、2-2、3-2の場合に、ボール球が2球目までに投じられたケースが含まれる。そこで、データ分析会社「DELTA」の協力で、過去3年間の0-2を経由したケースだけを抽出した。19年は1-2が1割7分3厘、2-2が1割8分6厘、3-2が2割1分4厘。単純なカウント別打率と比較し、差は最大で1-2の5厘。2-2と3-2では2厘以内と、ほとんど両者に違いはなかった。やはり、ボールカウントの増加は、打者を利すると言える。

米大リーグではどうか。日本と同様に、ボールカウントが1つ増えるごとに、打率は上がる。0-2は1割4分9厘と最も低く、日本の1割4分5厘と大差ない4厘差だ。大きく違うのは、0-2での打数の割合だ。全カウントのうち、10・3%を占める。日本はここ20年ほど上昇傾向なのだが、昨年の8・1%が過去最高だった。米国ではデータ的に2ストライクから攻め込んだ方が有利であることが判明していることや、肩や肘を消耗品と捉え、球数を1球でも少なくする意図がありそうだ。打者の積極性も関係しているかもしれない。

少年野球などで、2球で追い込んだ後、3球目を打たれて「慎重にいけ」と怒られた投手は少なくないだろう。だが、高校野球で球数制限が始まり、データでも立証されているだけに、今後は3球勝負が増えるかもしれない。