ソフトバンクの絶対エースが復活した。キャンプ途中から右上腕部の張りなどで出遅れていた千賀滉大投手(27)が楽天戦に今季初先発。5回4安打3失点で打線の援護もあり白星をマークした。初回に自己最速タイ161キロをマークするなど6奪三振。頼れる右腕復活で首位楽天への反撃態勢を整える。

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すべての力を込めた。ソフトバンク千賀の右腕から放たれた剛速球は161キロを計測した。昨年の開幕戦でマークした自己最速タイを復活マウンドで見せた。

1回、楽天先頭打者の茂木へ、初球から159キロを3球続けた。カウント1-2からの4球目。三振を奪いにいった直球が161キロ。ファウルになったが復活を印象づけるには十分な数字だった。

千賀 1軍の舞台はやはり違う。気持ちの入りようも違う。

苦しかった。制球にバラツキがあり、変化球の精度ももうひとつだった。それでも踏ん張った。「ダメだったので、どうしようと思った。昨年ほど球の質は行ってないと思った」。右ふくらはぎ、右上腕部の負傷から復活してきた日々を思い出した。1回に2点を奪われ3回には浅村に1発を浴びたが、その後は失点を許さず5回94球で4安打3失点。負けるわけにはいかなかった。

「マウンドでも(ドームの屋根に当たる)雨の音が聞こえてました。テレビで見てもすごい被害が出ている。これ以上、被害が大きくならないことを願うばかりです」。九州地方を襲う豪雨での被災者によりそい、マウンドで踏ん張る力にした。新型コロナウイルス感染拡大防止のため開幕が遅れたが、その期間に徹底的にフォームを修正した努力は実った。

試合前に監督室に足を運び、工藤監督にあいさつした。「エースとしての自覚があるのか、開幕に間に合わなかったことを気にしていたんですかね」(工藤監督)。千賀も「こうやって投げられているのも周囲の人のおかげだと思った。勝てたのも野手、中継ぎの方のおかげ」と感謝の気持ちを忘れず責任回数を投げきった。

開幕ローテーションを担うようになった16年からのシーズン初登板ではこれで4勝1敗。唯一の1敗は17年の楽天戦だった。リベンジも果たしての復活劇。そしてペイペイドーム通算999勝で1000勝にリーチをかけた。「今日は勝たせてもらったので、今度はこれを返せるような投球をしたい」。大黒柱の言葉には、それでも“復活”してないエースのプライドがにじんでいた。【浦田由紀夫】