ソフトバンク和田毅投手(39)がベテランの投球術で2勝目を挙げた。疲労を考慮され中10日で臨んだ先発で、6回までわずか1安打88球で無失点。最速141キロながら、直球と変化球を低めに集めた。チームは観客が詰めかけた10日から負けなしの5連勝。ベテラン左腕の躍動で今季初の貯金2とし、2位タイに浮上した。

   ◇   ◇   ◇

この日最後の1球が、最速を記録した。和田が投じた88球目だった。6回2死走者なし。リードはわずか1点。オリックスが誇る強打者吉田正に141キロの直球を投げた。やや詰まらせた打球は力なく遊ゴロとなった。6回1安打無失点。緊迫した展開で、二塁すら踏ませなかった。

和田 最後の最後に力を振り絞りました。7回も投げなければいけないけど、精も根も尽き果てました。

開幕からローテーションを守って3戦を投げ、今季初勝利を挙げた4日以降、登録を抹消されて中10日で挑んだマウンド。周囲の配慮も感じ、結果を残すと意気込んでの登板だった。「最後は1発を浴びて同点にされるのが嫌だった」。141キロではあるが、今の和田には全力だった。

苦しむ「同級生」に向けてのマウンドでもあった。西武松坂が先日、頸椎(けいつい)の手術を受けたことが発表された。「よほどのことなんだろうと思う。18年に自分が肩を痛めて心折れそうな時に、中日で投げていた姿を見て励まされた。今回はその逆じゃないけど、少しでもそう思ってもらえたら」。エールの奮投でもあった。

10日に有観客となってからチームは5戦5勝。和田もビジターながら久しぶりに観客の中で投げた。「拍手も聞こえたし、やっぱりファンあってのプロ野球だと思った」。新型コロナウイルス感染拡大防止の自粛期間も、ファンを思い、医療従事者を思い、高校球児のことを思っていた。三塁側から聞こえる拍手を勇気に変えた。

今季初勝利は栗原の誕生日。2勝目は今宮の誕生日だった。「前回は投げ終わってから栗原の誕生日を知ったけど、今回は(今宮)健太は知っていたから良かった」とウイニングボールは今宮にプレゼントした。

工藤監督もベテラン左腕に感服だ。「低めに来ていたし、緊張感のあるなか、さすがの投球でした」。39歳左腕の活躍もあり、今季2度目の0封勝利で2位タイに浮上。連勝街道を突き進み、首位楽天を追いかける。【浦田由紀夫】