海の日に海人が輝いた! 西武のサブマリン与座海人投手(24)がプロ初勝利だ。初回にいきなり2失点。だがそこから粘りの投球で5回6安打2失点とまとめた。川越誠司外野手(27)のプロ初本塁打や味方の好守にも助けられ、今季5試合目でうれしい1勝。勝利投手の権利まであと1アウトで交代となった前回12日ロッテ戦の雪辱も果たした。

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同じ過ちは犯さない-。3-2とリードした5回2死。4番安田を迎えた場面で、与座のボールが勢いを増した。この日はずっと120キロ台だった直球が、初球130キロ、2球目で最速の131キロをマーク。「2つアウトを取れて、ここから締め直すじゃないですけど、自分をもう1度奮い立たせて投げました」。最後は127キロシンカーで安田を中飛に打ち取り、小さくガッツポーズを繰り出した。

「もうひと殻破りしないといけないと思って『殻を破る、殻を破る』と思いながらずっと投げてました」。初回に2点を失っても、その後も毎回のように走者を出しても、強い気持ちを持ち続けた。3回には安田の強烈なライナーが顔面付近を襲ったが、体を倒しながら必死にもぎ取った。

大先輩の助言も効いた。勝利投手の権利まであと1死で交代となった前回登板後、1度登録を抹消され、ファームで調整した。練習前にロッカー室で松坂と話す機会があり「点差があっても気持ちは0-0のつもりで投げるように」とアドバイスされた。この日は「(最後まで)気持ちの波が少なかったです」と感謝した。

スポットライトを浴びる野球人生ではなかった。沖縄尚学での高校時代、新チームになった時は投手陣の3、4番手。「(周りに)同じタイプしかいない」という比嘉公也監督との会話からヒントを得て、腕を下げてサイドスローにする決意を固めた。岐阜経大(現岐阜協立大)で下手投げに転向する下地となった。同監督は「彼はずっと日の当たらない選手だった。それがプロですから。夢がありますよね。一番頑張ってほしい選手の1人です」という。

プロ入り後もトミー・ジョン手術を経験し、育成選手にもなった。「ほんと長かったのひと言ですね」とホッとした表情を見せた与座。今後は「1つ1つ勝利を積み重ねる、貯金を作れるピッチャーになりたい」。また今まで通り目標に向けて愚直にまい進する。【千葉修宏】

◆与座海人(よざ・かいと)1995年(平7)9月15日生まれ、沖縄県浦添市出身。沖縄尚学で13年センバツ出場。岐阜経大を経て17年ドラフト5位で西武入団。18年は1、2軍を通じて登板機会なし。10月に右肘のトミー・ジョン手術を受け、19年は育成契約。同年オフに支配下に復帰し、今年の6月21日日本ハム戦でプロ初登板。今季推定年俸470万円。173センチ、78キロ。右投げ右打ち。

西武辻監督(与座の勝利について)「なんとかだよね。満足する内容じゃなかったけど、あとのピッチャーに助けられながらも、この世界に入ってきて1勝は大きい。気持ち的にも楽に、そういう気持ちになって次の投球に臨んでくれればいいかなと思います」