高津ヤクルトが1点への執念を見せた。8回1死三塁、井野が広島D・ジョンソンの152キロをスクイズ。プッシュバントでフライ気味に上がった打球を前進守備の松山が捕りきれず、三塁走者の村上が生還。ダメ押しの9点目を刻んだ。

1軍指揮40試合目で、スクイズは初めて。リードは3点あった。「どうしても勝ちたいという意思、意地を今日は作戦として示したつもり。選手がしっかり応えてくれた。バントだったりスチールだったり、スクイズだったり犠飛だったり、四球を選んだり。本当にいい攻撃ができた」。一時は5点差を追いつかれた。もう1点、もう1点-。貪欲さが終盤の4点勝ち越しを生んだ。

前日まで今季ワーストの、1分けを挟んで4連敗。何としても「今日」止めたかった。8月6日。広島出身の高津監督にとって特別な意味を持つ。広島原爆投下から75年。相手はカープ。「広島戦、広島人以上に僕自身も思い入れがありまして。父の命日なので」。7年前のこの日、父年明さんを亡くした。負けは見せたくない。監督として力強く立つ姿を天に映した。

選手たちの思いも乗った。先発高橋が苦しめば、青木やエスコバーが好守で支えた。立ち上がりが課題のK・ジョンソンを、ともに通算対戦打率4割超えの坂口、青木のベテランがたたいた。体調不良の西田に代わって途中出場した井野は、スクイズの前にプロ初三塁打で勝ち越しのホームを踏んだ。「勝つことはすごくうれしい。1点でも多く、1点でも少なくをずっとやっていく」。次は上位を争うDeNA戦。束になってかかる。【鎌田良美】