初ものずくめだ。広島羽月隆太郎内野手(20)が「2番二塁」で初出場初先発し、2安打3打点で勝利に貢献した。9連戦の4戦目。虎のサブマリン青柳対策に広島打線は6人の左打者を並べた。今後の戦いも見据え、主砲鈴木誠も外す大胆な打線の中、18年ドラフト最下位指名となる7位入団からはい上がった小兵が2桁安打2桁得点と打線を活性化させた。

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身長167センチが大きな存在感を示した。プロ初先発の羽月は緊張感をかき消すように、1球に食らいつき、1打席に集中し、1つ先の塁だけを見つめてグラウンドを駆けた。1回のプロ初打席で犠打を決めると、2回は守備で二遊間のライナーにダイビングキャッチ。併殺でピンチの芽をつんだ。その裏にはセーフティースクイズを決め、5回は2点適時三塁打。2安打3打点と、華々しいデビューを飾った。

1軍昇格が伝えられた前夜は眠れなかった。球場で伝えられた先発起用にガチガチになった。緊張をほぐそうと先輩たちが声をかけてくれた。菊池涼からは「困ったら俺の方を見ろ。守備位置を指示するから」と勇気づけられた。「今できることを出そうと思いました。やるしかない」と腹をくくった。プロ初の長打となる三塁打も「全然覚えていない」。そんながむしゃらな姿が、チームを活気づけた。

酷暑の9連戦、この日は東京から広島へ移動しての4試合目。阪神青柳対策と疲労を考慮し、打線を大胆に入れ替えた。4番鈴木誠、5試合連続複数安打中だった長野を外し、6人並べた左打者の中にシンデレラボーイが潜んでいた。

18年ドラフト最下位指名となる7位からのたたき上げ。1年目の昨季は2軍で毎日のように特守でユニホームを真っ黒にした。オフにはメジャーでのトレーナー経験を持つ高島誠氏に師事。同門となったオリックス山岡やソフトバンク高橋礼らには「自分みたいなタイプはどう攻めますか?」と聞き魔となり、一流を肌で感じた。

高額年俸の主力たちがベンチに控える中、推定年俸500万円の小兵がチームの勝利に貢献した。佐々岡監督も「思っていた以上に活躍してくれた。ファームでやってきた成果を出してくれた」。育成の広島を象徴するような若コイが、また佐々岡広島に加わった。【前原淳】