広島堂林翔太内野手(29)が4点を追う7回、18打席ぶり安打となる2点適時打を放った。

5打席目の凡打で打率が3割を切ったものの、4試合ぶりの快音は数少ない明るい材料だ。長い低迷からはい上がってきたスラッガーとともに、最下位のまま苦しい状況が続くチームも再び浮上を目指す。

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振り抜いた分だけ球威に負けなかった。4点を追う7回1死二、三塁。堂林はDeNAエスコバーの内寄りの低め154キロを左肘から抜くようにバットを出した。上がった打球は投手を越え、二塁ベースを越え、中堅前で弾んだ。三塁走者に続き、二塁走者も生還。18打席ぶりの安打が2点適時打となり、反撃ムードを上げた。

DeNA先発井納には2打席連続三振を含む3打席凡退で、一時4割4分6厘あった打率が3割を切った。11日中日戦の2打席目の中前打以降、無安打は17打席。外角攻めが増えたことで上体が本塁側に倒れ、ミスショットを生む一因となっていた。3打席凡退で気持ちを切り替え、「強い真っすぐに合わせて入った」と、上体を起こして3球続けた直球を見事に捉えた。

試合のなかった前日17日、休日にも球場を訪れ、コンコースをウオーキングして汗を流した。当日は29回目の誕生日。中京大中京で全国を制した夏から11年が過ぎた。6点差で迎えた9回、日本文理に1点差まで迫られた。あの夏に1球の怖さ、最後まで何が起こるか分からないことを身をもって知った。プリンスと呼ばれた高校時代から、プロで泥にまみれた。あの教訓は今も残る。「チームも最下位。自分ももうひと踏ん張りして、チームの勝ちに貢献したい」。今は三塁手レギュラー取りの好機が目の前にある。チームが最下位でも、打率が3割を切っても、下を向かない。

30歳を目前に、がむしゃらさだけではなくなった。若いころはひたすらバットを振ったが、打撃の状態が良くないと判断した前日はバットを振らなかった。向上したのは技術や肉体だけではない。「昨年1軍にいなかったことを考えると、1軍でプレーできていることに幸せを感じながらやっている。1年間、戦力になりたい」。成熟期を迎えた心技体で、逆風を乗り越えていく。【前原淳】

 

広島佐々岡監督「(打率が)下降線のところで1本出たので、変わってくれれば」

広島朝山打撃コーチ「(連続三振で)消極的になりがちになる。エスコバーのときは思い切って行けと言った中で久々にタイムリーが出て、本人もホッとしている。1本出て表情も明るかったし、良かった」