技巧派の真骨頂。広島野村祐輔投手(31)が11日ぶりの最下位脱出を導いた。DeNA打線を相手に粘りの投球で8回6安打2失点。最後まで先頭打者の出塁を許さず、ゴロの山を築いた。ケガの影響でシーズンに出遅れた右腕が上り調子の3勝目。53歳の誕生日を迎えた佐々岡監督に白星をプレゼントし、復肩を示した。

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両サイドに左右、前後の揺さぶりをかけ、振りかぶる動作にも緩急をつけた。先発野村は最後まで自分の投球でDeNA打線を手玉に取った。140キロに達する球速は数球のみ。立ち上がりから強気に内角を見せながら、カットボールにシュート、チェンジアップと持ち球をまんべんなく投じ、的を絞らせなかった。8回まで24アウトのうち三振は9個、ゴロアウトも9個。「自分らしい投球ができました」と胸を張った。

真骨頂だった。常々「入りが大事。回の先頭打者を取って、自分のペースにすることが一番大事」と口にする。この日は7回まで先頭打者の出塁を1度も出さず、許した安打もすべて2アウトからだった。「前回すごく反省するところだった」。1週間前の対戦では1回に2点を失い、ゲームの主導権を相手に渡していた。

入りが大事なのは、投球だけではない。夏場のコンディション維持に大事な睡眠も“入り”が重要と説く。「この時期は暑いので眠れなくなる。いかに良い睡眠を取れるようにするか。そこは注意している。最初なんですよ。いかにスッと寝られるかは」。エアコンの温度は26~27度。タイマーで1時間後には消えるよう設定し、室内が冷えすぎるのを避ける。「一番は慣れること。その、環境に慣れる」。今季6試合すべて屋外球場での登板だが、最長の8回を投げ切った。

11日ぶりの最下位脱出を導き、前日4投手が登板した中継ぎ陣の負担も減らす快投だった。53歳のバースデー勝利となった佐々岡監督は「今日は祐輔だね。8回まで粘り強く投げてくれた。言うことはない。8回で100点満点」と手放しでほめた。シーズンの“入り”はケガで出遅れた技巧派右腕が、反攻の旗振り役となる。【前原淳】