主砲から未来のスターへ-。楽天浅村栄斗内野手(29)が決勝弾を含む今季初の1試合2本塁打で通算200本塁打を達成した。オリックス山岡から中堅へソロを2発。同点の19号、勝ち越しの20号と、重要局面で仕事を果たした。10年前にプロ1号を放った杜(もり)の都仙台で、この日デビューを果たしたドラフト2位黒川史陽内野手(19)へ主砲としての道筋を見せた。

   ◇   ◇   ◇

打ってほしいところで、打った。追いつかれた直後の6回、先頭の浅村が仕留めた。カウント2-1。オリックス山岡の真ん中高め142キロ直球をフルスイング。フォローは左手一本。打球はマスク越しに漏れる歓声に乗った。バックスクリーン右へ20号決勝ソロ。「大事な場面で打てて良かった」。表情は変えずに、ダイヤモンドを回った。

もはや慣れ親しんだお立ち台。隣には黒川が立っていた。ドラフト2位の19歳。プロ初打席で初打点を挙げた。同じ二塁手として春季キャンプから教えも請われた。「19歳らしくない。打席の中でバタバタしない。芯が一本あるように感じる」。ヒーローインタビューの最後に黒川から「浅村さんのホームランを見て、一生ついていこうと思いました!」と叫ばれた。

浅村 今まで通りやっていけばいい。変に小さくなったり、ヒットがほしいと思って当てにいったり、そういうことはしてほしくない。とにかく19歳らしく頑張ってほしい。

歩んだ道をさかのぼる。10年8月10日、3678日前の仙台。19歳の浅村が楽天山村の内角球を捉えた。打球は左中間へ一直線。ダイヤモンドを駆け抜け、ベンチでチームメートから頭をはたかれた。「覚えてますよ。200本も打てるとは思わなかったし、そういう選手にもなれるとは思わなかった」。1年目を終え初のオフは中島(現巨人)とともに自主トレを積んだ。「あの人と一緒に野球をやっていなかったらここまで来られてない。尊敬できる先輩です」。師匠の次に200本塁打へ到達した。

ここ数試合、好機を逃し、たまっていたうっぷんを自ら晴らした。「自信を持ってプレーしたことはない。不安を抱えて試合に挑むことは変わらない。悩みながらやっています」。グラウンドで全力を尽くす。スターの系譜は、背中でつながっていく。【桑原幹久】