複数球団が今秋ドラフトの1位候補に挙げる近大・佐藤輝明内野手(4年=仁川学院)が、起死回生の同点ソロを放った。1点を追う9回1死。2-2と追い込まれながら、関学大左腕の150キロ直球を迷わずはじき返した。「(打った瞬間)行ったと思った。真っすぐにタイミングを合わせることができた」。強烈な打球音を残し、弾丸ライナーで122メートル先のバックスクリーンへたたき込んだ。

「まだボール球を追いかけていた。自分から動かないことを意識した」と2試合で1安打だった前週の反省点を生かした。黒星寸前から生まれた今季初本塁打でリーグ初のタイブレークに持ち込み、チームは延長10回に競り勝った。強打者の真骨頂を見せた佐藤は「いいところで追いつけた。そこだけ良かった」と浮足立つことなく喜んだ。

ネット裏を熱くさせた。開幕戦は12球団が視察し、この日も巨人や阪神など10球団17人のスカウトが集結。“糸井2世”ともささやかれる長距離砲の1発に、阪神和田テクニカルアドバイザーは「芯で捉えた打球はやっぱりプロレベル。コンパクト気味でもあれだけ飛ぶ」と絶賛。巨人渡辺スカウトも「(中堅)122メートルに打ち返せるだけの力がある。一番良い形で出た」など称賛の声が続いた。

佐藤は通算12号とし、OBで巨人3軍監督の二岡智宏氏(44)が持つリーグ記録に王手をかけた。記録更新も視野に入ってくるが「そこの意識はない。目の前の1戦、1打席に集中していきたい」。走攻守がそろう1位指名の筆頭候補。超人にエンジンがかかってきた。【望月千草】

▽ロッテ黒木スカウト(バックスクリーンへの弾丸ライナーに) あれが一番の魅力。なかなかプロでも打てない。普通なら力んで力が出ないのに、物の見事に持っている力を見せてくれた。

○…観戦した佐藤の父博信さん(53)は「バックスクリーンは公式戦初めてでは。最高の所に運んでくれた」と喜んだ。かつては柔道86キロ級の選手。元アスリートとして前週も球場で佐藤の打席を撮影し、試合後に送信してサポートしてきた。スタンドから「明日も頼むぞ!」と近大ナインへエールを送った。