「直人魂」が火を付けた。3位楽天が17安打14得点で日本ハムに打ち勝ち、2連勝を決めた。

渡辺直人内野手の引退会見で花束を贈呈した浅村栄斗内野手(29)が先制2ランを含む3安打3打点、鈴木大地内野手(31)は同点打を含む4打点を挙げ、リーグトップの100安打に到達。今季8度目の2桁得点と打線がつながった。渡辺直が選手として臨むレギュラーシーズンは残り47試合。6・5ゲーム差で追う首位ソフトバンクまで、まくり上げる。

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「どんな時でも前向きにプレーしてほしい」。試合開始から2時間半前。渡辺直は引退会見で、チームメートへ思いを託した。

「直人さんが引退会見をして、1発目のゲーム。負けるわけにはいかない」。1回2死二塁。浅村が口火を切った。日本ハム有原の真ん中低め直球を豪快にしばき上げた。右翼席前列への22号先制2ラン。快音直後にベンチから一目散に飛び出した渡辺直を横目に、表情を変えずにダイヤモンドを回った。

「直人さんに打たせてもらいました」。6点を奪われた直後の2回。3点差に追い上げての2死満塁で、鈴木大が前を向いた。有原の直球を右中間へはじき、走者一掃の同点適時二塁打。両手を上げ笑顔の渡辺直へ二塁から右拳で返した。

「みんなが喜んでいる姿、顔を見るのがうれしい」。引退を発表した前日12日、渡辺直はチーム全員の前で、こう伝えた。心を動かされた三木監督も「渡辺直人のためにみんなで残り試合を全力でやろう」と追い風に乗った。「非常に心打たれるいい話をチームのみんなにしてくれた。みんなの思いがプレーにつながった」。両リーグトップのチーム得点数を誇る打線が、14試合ぶり今季8度目の2桁得点。毎回安打で乱打戦を制した。

「やっぱり優勝したい。僕はまだ優勝したことがないので、チームとしてみんなで喜び合いたい」。渡辺直の現役最後の目標であり、願いだ。首位ソフトバンクとは6・5ゲーム差に縮めた。可能性がある限り、どんな時でも前を向く。【桑原幹久】