川村さん、勝ちましたよ-。ソフトバンクがともに戦った仲間にリーグ優勝を届けるため、力強く再出発した。

両軍無得点の9回に選手会長の中村晃外野手(30)が三塁強襲の内野安打を放ち、史上308人目の通算1000安打を達成。好機を広げ、グラシアルの決勝打を呼んだ。前日16日に川村隆史3軍コンディショニング担当がくも膜下出血のため55歳で急逝。前夜の試合後に訃報を知ったナインが、チーム一丸の戦いで白星を届けた。

    ◇   ◇   ◇

亡き恩人のために、力強くバットを振り抜いた。両チーム無得点で迎えた9回無死一塁。中村晃が三塁強襲の内野安打でプロ1000安打を達成した。松田宣から受け取った記念ボードを掲げながら、熱い思いを胸に抱いていた。「本当にみんなつらかったですし、もっともっと生きてほしかった…」。川村さんの急逝から一夜明けた。前日の日本ハム戦後に知らされた選手にとっては、訃報に触れて臨む最初の試合だった。中村晃が好機を広げ、グラシアルが右前へ決勝打。チーム一丸で恩人に白星を届けた。

今季から選手会長を務める中村晃はプロ13年目でひとつの節目に到達した。「関わったすべての人たちに感謝したい。たくさんいますね。数え切れないです」。周囲への感謝は尽きないが、08年の入団時すでにコンディショニングコーチだった川村さんも大事な恩人の1人だ。「2軍にいる、新人の時からたくさん教えてもらいましたし、体を大きくできたのも川村さんの指導があってだと思う。今戦えてるのもそのおかげ」とかみしめるように言った。

昨年は自律神経失調症と診断され、44試合の出場にとどまった。今季も両膝痛で開幕2軍スタート。苦しい時期を乗り越え、今グラウンドに立っている。「なんでああいう人が死なないといけないのかなというのが素直なところですね。つらいですけど、みんなで川村さんの分も頑張って生きていきたい。結果が出なかったりすることなんて小さいこと。命あるだけでなんでも可能性は広がっていくと思うので」。野球ができる喜びを人一倍に感じている男は「生きる」という言葉で感謝を表した。

この日、チームは球場入りした後に全員で黙とうをささげ、試合では左肩に喪章を付けて戦った。前日は涙を浮かべていた工藤監督も「これでいい報告ができますね」と小さく笑った。【山本大地】

▽ソフトバンク工藤監督(川村さんの訃報から一夜明け)「我々は前を向いて戦っていくしかないし、川村君もきっとそれを望んでくれてると思う。彼の性格を考えても、しっかりした野球をして、明るく野球をやることが、彼に対して報いることになると思う」

▼通算1000安打=中村晃(ソフトバンク) 17日日本ハム18回戦(札幌ドーム)の9回、上原から三塁内野安打を放ち達成。プロ野球308人目。初安打は11年5月10日オリックス4回戦(ヤフードーム)で寺原から。