ソフトバンクの若手成長株が、勝負の一戦で白星を呼び込んだ。同点で迎えた5回1死一、二塁で、栗原陵矢捕手(24)が右翼越えへの決勝12号3ランだ。開幕から84試合連続スタメン出場も打撃不振でスタメン落ち。3試合ぶりのスタメンで25試合ぶりの1発を放ってみせた。楽天則本昂を打ち崩して3位楽天とのゲーム差を6・5に広げ、ロッテとの1ゲーム差の首位をがっちり守った。

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悔しさが詰まった打球が右翼席で弾んだ。ソフトバンク栗原が勢いよく一塁ベースを駆け抜ける。楽天生命パークが静まりかえり、マウンドで則本昂がうなだれるなか、背番号31がダイヤモンドを1周し、両手の拳に力を込めてホームベースを踏んだ。チームに勝利を呼び込む決勝12号3ラン。栗原自身25試合ぶりとなる1発は成長株復活の一振りでもあった。

1-1で迎えた5回1死一、二塁。則本昂の直球を思い切りたたいた。「試合前の練習から目付をもう1回しっかりして、打てるところを待つようにした。ホームランより内角をしっかり振れたのがよかった」。今季は開幕から84試合連続でスタメン出場も、打撃不振で26日ロッテ戦から2試合を欠場。3試合ぶりスタメン復活でしっかり結果を出した。

本来は捕手だが、打撃力を生かすために、今季は一塁と外野で開幕からスタメンを続けてきた。柳田が開幕81試合で連続先発が途切れても栗原は唯一スタメンを守った。しかし9月に入って打率が1割台に低迷。プロ6年目で初めて味わう連続出場の疲れがバットを湿らせた。工藤監督も「試合に出ることで成長できることがある」と我慢してきたがついに欠場を決断。今季の打線の「顔」でもあった栗原への期待の裏返しで「リフレッシュさせたい」という工藤監督のはからいにバットで応えた。「やっぱり悔しかった。今日(29日)スタメンと聞いたときはチームのために頑張ろうと思った」。24歳に笑顔が浮かんだ。

4年連続日本一を狙う打線で打撃力でレギュラーをつかんだ。簡単にその座を手放すわけにはいかない。「ベンチから見える景色もあった」と欠場2試合でさらに成長した。この日から長谷川が新型コロナウイルス感染症から1軍復帰。競争もさらに激しくなるなか、好調若手バットの復活がチームを首位固めに走らせる。【浦田由紀夫】

▽ソフトバンク工藤監督(栗原の決勝3ランに)「悔しい思いをしたと思うが、結果が出たというのは私もうれしいし、打撃コーチもうれしかったと思う。本人にも、この世界は結果だから、これからもしっかりと結果を出していかないといけないよ、と話をしました」

◆栗原陵矢(くりはら・りょうや)1996年(平8)7月4日、福井県生まれ。春江工では高校通算26本塁打。2年春にセンバツ出場。3年時は高校日本代表の主将を務めた。14年ドラフト2位でソフトバンク入団。17年6月13日巨人戦でプロ初出場。昨季は32試合で1本塁打、7打点、打率2割3分1厘。179センチ、75キロ。右投げ左打ち。今季推定年俸1000万円。