巨人原辰徳監督(62)が、トレード期限となる譲渡可能期間を撤廃し、年間を通して移籍可能とする独自の球界改革案を披露した。コロナ禍の今季、巨人は楽天からウィーラー、高梨を獲得するなど楽天と3件、ロッテと1件の計4件のトレードを成立させた。支配下登録選手の上限に定められる70人枠の撤廃にも言及。優勝争いやCS進出を懸ける戦いが本格化するシーズン後半戦も、各球団のニーズに合わせた選手移籍が可能になるシステムの構築を求めている。

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野球協約に定められたトレード期限は毎年7月31日までで、コロナ禍で開幕が約3カ月遅れた今季は9月30日に延長された。巨人は同29日に田中貴を金銭トレードで楽天に送り出し、期間中に12球団最多4件のトレードを成立させた。

編成面の責任も担う「全権監督」として指揮する原監督は「やっぱり期限を設けてはダメでしょう。一年中。ずっとトレード期間にすればいい。うちならこの選手は可能性あるとか、話が出てくるかもしれない。(期限後の後半戦は)むしろ活発にならなきゃいけない時期」と言った。

プロ野球選手にとって現役でプレーするのは限られた時間。原監督は「個人事業主」「夢追い人」と表現し、移籍の活性化が球界全体の発展とともに、選手個々のチャンス拡大につながると感じている。

「プロの世界だから、弱肉強食であることは間違いない。弱者救済とかじゃなくてね。こっちにはマイナスかもしれないけど、あっちには必要なパーツかもしれない。それだけいいものを持っている。だからプロ野球選手」。楽天で2軍暮らしが続いたウィーラー、高梨は巨人の欠かせない戦力になった。一方でチャンスをつかめなかった沢村は、ロッテのリリーフとして優勝争いの中で腕を振る。

年間を通してトレード可能になれば、新型コロナウイルスによる離脱など有事にも対応できる。育成からの支配下登録も期限は消滅。各球団のニーズに合った移籍を活性化させることで、出場機会の少ない選手を対象に実施を検討中の「現役ドラフト」よりも、選手にとっては出場チャンスが広がる可能性がある。

原監督は支配下登録の上限70人枠の撤廃にも言及。「極端に言うと、プロ野球発展のために多く雇用しているチームは企業努力をして、社会貢献をしている」。1軍ベンチ入り枠などは固定しても、チーム全体の人数は各球団の方針や予算によって幅を設ける案。「野球界発展のためには枠なんてない方がいい」。球界全体を見据え、信念を示した。【前田祐輔】

 

<巨人原監督の主な提言>

◆引退選手の「特別枠」ベンチ入り(13年10月10日) 引退試合で当該選手の代わりに登録抹消された選手は、10日間出場できなくなるため「引退を表明した選手は別枠で1試合だけベンチに入れるようにしてはどうか」。花道と戦略を両立させる案を披露した。

◆セ・リーグのDH制導入(19年10月24日) 日本シリーズでソフトバンクに4連敗し、パが7年連続で制した直後のオーナー報告で「DH制は使うべき。差をつけられている感じがある」。教育的な面でも「レギュラーが増えた方が少年たちだっていい」。

◆人的補償の撤廃(19年11月4日) 18年オフに丸、炭谷をFAで補強した一方で長野、内海を人的補償で放出。プロテクト枠を28人から40人への拡大も案とし「FAは明るいこと。それを暗いニュースにさせてしまう。人的補償という犠牲者みたいな名前も悪い」。

◆高校生トライアウト(20年5月21日) 新型コロナウイルス感染拡大で夏の甲子園の中止が決定。高校球児に「あらゆる人たちが君たち金の卵を発掘しようとしている。チャンスを与える手段をプロ野球として考えていきたい」と約束。のちに日本野球機構(NPB)と日本高野連が協力し「合同練習会」が実現した。