阪神が矢野燿大監督(51)に来季続投を要請することが12日、分かった。藤原崇起オーナー(68=電鉄本社会長)が「当然」と明言した。

矢野監督は18年10月に3年契約で就任。1年目は貯金1で3位、2年目はここまで貯金3で2位をキープも、首位巨人とは13ゲーム差で2年連続V逸が濃厚な状況にある。今季はコロナ禍にも見舞われたが、「その時のセカンドベストを貫いている」と手腕を一定評価。契約最終年の来季は背水のシーズンになる。

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藤原オーナーが矢野監督への信頼を口にした。「いろんなアクシデントがある。その時、その時のセカンドベストを貫いているというふうに思います。今はこういう状況になりましたけど、そういう状況の中でベストを尽くしてくれている」。見えない敵が日本列島を襲う異例のシーズン。相次ぐコロナ感染者を出したタイガース。逆風が吹き荒れる中、難しいかじ取り役を担う指揮官を評価した。

昨季はシーズン終盤、奇跡の6連勝から貯金1のリーグ3位に滑り込んだ。開幕が3カ月遅れとなった今季も、超積極野球を掲げてリーグトップの65盗塁。9月25日には、5選手の新型コロナウイルス感染が確認された影響で1度に10人が出場選手登録を外れたが、その後は15試合で7勝7敗1分けと2位をキープしている。シーズン最終盤で就任時から起用する近本、大山らもタイトルを争う。

虎の総帥は来季以降の指揮について「もちろん、まったく変わっていません。何も変わったところはありません」と、はっきりと続投を明言した。来季も期待するか? と念押しされても「そらそうです、当然です」と、言い切った。

ただ、順風満帆ではない。3年目の矢野丸には荒波が待っている。今季は残り24試合。2位とはいえ、優勝マジック12が点灯する首位巨人とは12・5ゲーム差をつけられている。昨年に続き、2年連続優勝争いに参加できないまま、シーズンを終えようとしている。宿敵巨人には東京ドームで開幕8連敗を喫するなど、ここまで6勝14敗で9年連続負け越しが決定。今季の独走を許す要因になり、自然と周囲の目も厳しくなる。

課題は数字に表れる。守り勝つ野球が、広い甲子園を本拠地とする阪神のスタイルだが、チーム失策数は、両リーグワーストの67。102失策で同ワーストだった昨季から改善されず、ミスで負ける試合も目立つ。攻撃面でも打率2割4分7厘はリーグ最下位だ。来季に向けてサンズ、ボーアら8人を抱える外国人選手の戦力見極めは必至。コーチ陣のテコ入れなども十分にあり得る。来季の優勝争い参戦は必須命題。3年契約最終年は、勝負をかけるシーズンになる。

◆矢野燿大(やの・あきひろ)1968年(昭43)12月6日生まれ、大阪府出身。桜宮-東北福祉大を経て90年ドラフト2位で中日入団。97年オフにトレードで阪神移籍。03、05年優勝の立役者に。10年限りで引退。通算1669試合、1347安打、112本塁打、570打点、打率2割7分4厘。16年に阪神に復帰し、17年まで1軍作戦兼バッテリーコーチ、18年2軍監督を経て、19年から1軍監督。181センチ、79キロ。右投げ右打ち。